寒い日々から春の気候に変わってしばらく経った。
つい最近までみんなでコタツに入って鍋パーティーなんてしていたのに今やめっきりなくなって。それでもコタツがあればつい足をいれてしまうのが人間だと思う。
こっちの世界に来るまでは、ついだらだらと五月半ばまで片付けないまま放置していた日々を思い出す。
そういえばあの家はどうなったのか。あたしがいなくなって大げさに言えば何か世界は変わったのだろうか。
こんな、意味があるようなないようなことをつらつらと考えてしまう。
今日は雨が降っているから。
気温が低くて。
少し冷えた足を懐かしく感じるそこに入れた。ふわりと暖かい厚めの生地が体全体を包み込んでくれてゆったりとした空気が流れる。
そこに入ってしまえばもう抜けることは困難だ。
そうしていればサンジが気を利かせて熱燗持ってきてくれる。
ナミはみかんを持ってきて、器用に皮を剥いてあたしの口に無理やり突っ込んでくる。
ひとしきり遊び終えたルフィとチョッパーとウソップが枕を持ってきてコタツで寝出す。
後からロビンもそこに入りはしなかったけど近くにあるソファーで本を読み出した。
ゾロもお酒を持ってきてあたしの隣に座る。
船の上でみんなといっしょに生活してるから、もちろん毎日顔を合わせるけど。
決して広くはないけれど決められた船の範囲内で、それぞれ一日を過ごすから。
ご飯以外でこうしてみんなが集まることは実はそこまで多くはないんだ。
だけど、コタツがあったら、何でもないのに自然にみんな集まったりして。
普段のご飯も何となく特別に感じたりする。
「もう片付けなきゃって思ってたのに、」
「うん、何か理由付けて片付けれないよね。」
「今日みたいに肌寒いと尚更踏ん切りつかないわ。」
「ロビンはあんまり入らないね、」
「ふふ、入らなくても空気が暖かいもの。」
ナミは前々から片付けなきゃって言ってた。
明日こそは片付ける、って思っても、誰かが入ってたらつい自分も入っちゃう。また雨が降ったらきっと今日みたいに入りたくなっちゃうから。
そう思っていたらやっぱり片付けるのは先延ばしになってしまう。
「いいじゃねぇか、片付ける日なんて適当で。」
「ふふ、ゾロはコタツ気に入ってるよね。あ、お酒ちょーだい。」
「おー、ここ寝やすいんだよ。」
熱燗がなくなったからゾロのお酒をもらう。ゾロ好みの辛口だから、あんまり量は呑めないけど。
コタツに入って呑むお酒はついくどくなる。
心地いいからもう一杯、もう一杯、って呑みすぎてしまう。
「でもいい加減片付けねぇと体怠けちまいそうだよな、」
ナッツを使ったおやつにもおつまみにもなるものを持ってきてくれたサンジが言った。
サンジはコタツが設置されてからほんの少しだけ、キッチンにいる時間が減ったかもしれない。
それでもみんなよりかはこの部屋とキッチンを行ったり来たりと動いているんだけど。
体が怠けてしまいそう。
正にその通り。
でもねー、やっぱり。
名残惜しい。
(明日からこれがなくなるのかっていざ思ったら、)
(ねー、)
(よし、今日は久しぶりに鍋しよう鍋。)
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