「っ!!!?」
間一髪、振り翳された真剣を避け刃は俺の右肩を切り裂いた。
『・・・・ふ。ふふふっ。油断大敵ですよ副長?』
漸くしてから発した言葉は、俺の知っている人一倍仲間思いの名字からはあり得ない言葉だった。
「・・・・・・ハッ。不意討ち狙いやがったくせによく言うな。」
・・・・・・・・あァ。やっぱり、もうあの頃のアイツはいねぇんだな…
殺気が飛び交う状況の中、俺たちはまるでこの場を楽しむように お互い笑みを浮かべている。
俺の後ろでは近藤さんたちと攘夷志士たちが刃と刃がぶつかり合う音が聞こえる。
「どうする副長?大切な部下をアンタは斬り殺せんの?あ、でも 鬼の副長って言われてるぐらいだからあっさり実行できるのか…」
「るせぇよ。テメェと話しってっと屁吐が出そうなんだよ。その 汚ねぇ口開くんじゃねぇ。」
「・・・・副長は相手を苛つかせるのお上手なんです、ねっ!!」
そう言い放ったと同時に古賀は床を蹴った。
「くっ!」
ガキィィン!!
火花を散らし、ギリギリ刀で受け止める。
ギチギチと刀と刀が擦れ、両手の相手と片手の俺では当然のように押され、しばらく耐えていたが俺の刀は弾かれ遠くで床へと突き刺さった。
「っ!!!」
「あははははは!!!死ねぇぇぇ土方ぁぁぁ!!!」
狂ったように迫り来る奴を避けるのには容易いことだ。 なんせ、相手を殺せる喜びで自分を忘れている奴程剣筋が狂うからだ。
しかし、俺は避けられなかった。
斬られそうな俺を横で見ていた名字の瞳が 、驚きに揺れていたからだ…
・・・・・・え?
グシュァァァ!!!
狂喜な瞳の古賀は、がら空きの俺の腹を不気味に笑いながら刀で貫いた。
「トシィィィィ!!!!?」
「!?土方さん!!!」
『っ!!?』
古賀が刀を抜き去ると、俺はスイッチが切れたように倒れ込んだ。
「ハァ・・・・・・・・。・・・ハ・・・・・。」
虫の息な俺の視界は暗闇に堕ちていく…
『・・・・・・・・・・さん・・・・・・・・・・ひ・・・・』
?なん、だ・・・・?
なんか温かいものが頬に…
『う・・・・・・ぁ。ひっ、くっ…
し、死なないでぇぇぇぇ!!!』
「!!!?」
虚ろだった俺の意識は、現実に戻された。
「・・・・・・・・名字?」
『ひっ、うぐっ。うぁぁ・・・・ひ、ひじ、ひじかたさ、ん・・・・』
大量の涙を流し、必死に俺の名前を呼ぶ名字の顔が目の前にあった。
あまりのぐちゃぐちゃな顔に思わず笑みが零れ、流れる涙を弱々しく拭った。
「ったく・・・・・・。なんだよ、その不細工な泣き顔は。」
すると俺の手を取り頬に擦り付けると、見たことのない女らしい嬉しそうな表情で笑った…
『ひどい・・・・副長ぉ・・・・。』
「フッ。・・・・なんだよ。可愛い顔出来んじゃねぇか…」
その顔につられてまた、俺も目を細め微笑んだ。
・・・・・・・・あぁ。いい夢だ…