「・・・・・・名前。ちょっといいですかィ?」



夜の夕食時、仕事終わりの隊士たちによって食堂は賑やかでちょっとした宴会と化していた。


そんな中、縁側で夜風に当たっていた私は不意に隊長に声を掛けられた。



『?なんですか隊長。』



部屋の灯りがここまで届いていないため、隊長の表情がいまいち読み取れない。


しかしその声の低さや口調から、何かあったのだと私は悟った。



「・・・・・・名前は古賀って言う隊士を知ってやすかィ?」

『…もちろん知ってますよ?』



そう、古賀とはウチの隊の隊士だ。 歳は確か20代前半の若者で、黒い短髪が似合う爽やかな人柄の印象の持ち主だ。


年齢が近いこともあって息が合い、上司と部下というよりも友だちのように笑ったり、一緒に過ごすことも少なくなかった。



『・・・・その隊士がどうかしたんですか?』



嫌な予感しかしない胸をなんとか落ち着かせ、恐る恐る隊長に問いかける。


月にかかった雲が流れ、私や隊長。屯所を照らし、隊長の表情がはっきりとした。


月光によってつくられた影によって、更に不穏な空気を感じさせた。反射をする隊長の紅い瞳は血の如く恐怖感を与えられる。



「古賀が行方を眩ませやした。」



ドクンドクンと心臓が激しく音をたて、私は無意識に喉を鳴らした。


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