「・・・・・・なに?裏切り者だと?」
土方、沖田、山崎、名字がいる広間に近藤の低い声が響いた。
4人からはとてつもない緊張感がピリリと流れ、そこにいるだけで全身の毛が逆立ちそうだ。
「はい。なにやら最近の攘夷志士どもの動きがおかしく、この間捕まえた浪士を拷問にかけたところ、何者かが情報を流しているらしいと報告がありました。」
「その裏切り者は?誰だか聞き出せなかったのか?」
土方は紫煙を一度吐き、山崎を睨んだ。
そんな土方に山崎は体を跳ねさせ、言葉を詰まらせる。
そんな山崎に溜め息を吐いた沖田はやれやれと首を振るう。
「聞き出す前に舌を噛みやがったんでさァ。…ったく、もう少しで爪の中に入りそうだったのに…」
『・・・・拷問を楽しそうにできる隊長は、ある意味裏切り者より危険です。』
「なんでェ名前。褒めたって何も出やせんぜ?」
「・・・・違ぇだろ。」
しばらく真剣な顔で黙って腕組みをしていた近藤は不意
に立ち上がり、とにかく!と話を戻した。
「以後、その裏切り者に気を付けろテメェら。尚、この話はここ にいるヤツ以外には他言無用だ!いいな!?」
「わーってるよ近藤さん。名字、お前は一番隊隊長補佐だから特別だ。洩らすなよ?」
その瞳孔を開いた鋭い目をさらにきつくする。 まるで、私まで疑われているようだ。
『・・・・・・御意。』
煙草の灰が落ちるのを合図のように会議は解散された。
「・・・・・・おい山崎。」
「はい?なんですか副長。」
みんなが出ていったあと、部屋を後にしようとする山崎は土方に よって呼び止められた。
誰にも聞かれないはずにもかかわらず、顔を近づかせ囁いた。
「――――――――――。」
「っ!?ふ、副長…それって…」
土方から発せられた言葉に驚きを隠せない山崎は、土方の考えている事がよく分からなかった。
しかし、その真剣な表情に山崎は静かに頷いたのだった。
自室に戻った私は、なぜか胸がざわつきよく眠れなかった。
これがこれから始まる予兆とも知らずに…