突然のことに少々驚いたが、私だってプロだ。
あくまでも冷静を装いつつ、丁重にお断りする。
『私と遊びたいのでしたら、まず会状を出して頂かないと「面倒臭いから遠慮しとくよ。」
『えっ…あ、あの一応決まりですので「そんなのどうだって良いよ。それに俺は此処の統治者…かな?だからもてなしてよ。」
【統治者】と言う言葉に更に私は心の中で驚く。
夜王に代わって若い男性がなったと聞いてはいたけど、ここまで若いなんて…
「その反応だと知らなかったみたいだね。」
ふわりとマントを翻して縁から降りると私の横に胡座を掻き座った。
そして、禿(かむろ)に酒を用意させると私に酌を要求する。
私は静かに応え、酌をするといつものように媚びを売る。
横から緩やかに腕を巻き付け、吐息が掛かるほど顔を近づける。
『・・・・どうしますか?もう準備は出来ていますが、・・・・私と・・一 夜限りの戯れを…しましょう』
「・・・・・・・・・・・・・・。」
いつもの男たちは、そのうす汚れた手を私の手へと重ねる。
しかし彼は笑ったまま、微動だにしない。
・・・・・・緊張しているのだろうか。
やっぱり、統治者と言ってもまだ若い…
私は目を細め、できるだけ優しく微笑む。
そして回した腕に力を込め、ゆっくりと距離を縮め…
グイッ!
『!』
私の腕を掴み、無理矢理引き剥がした。
私は今度こそ目を丸くし、固まる。
「・・・・・・・・その顔、気に食わないナ。」
『!!!』
カァッと顔が熱くなる。
『・・・・・・だって…ない…』
「?なに?よく聞こえない。」
バッと立ち上がると唇を噛み、彼を睨む。
『私だって、好きでやってやってるわけじゃない!!!だけどしょうがないじゃない!! 無邪気に笑っていた私はとうの昔捨てたの!!何も知らない余所者が、勝手なこと言わないで!!』
「・・・・・・・・・・・・・。」
ゼェゼェと肩で息をする私に彼は未だ表情を崩さない。
そして…
「そっちの君の方が俺は好きだヨ。」
『っ・・・・・・・・・・。』
先程から変わらない笑みが、心なしか少し軟らかくなったような気がした …