「幸村………アンタ、なんでここに」
政宗は目を見張った。一番会いたくて一番会いたくない人物が、いきなり目の前に姿を現したのである。
「政宗殿!よくぞご無事で…!」
幸村は政宗に駆け寄り、抱き締めようとしたが、政宗は左腕を真っ直ぐ前に伸ばし、それを阻止した。が、体がふらつき、幸村に抱き留められる結果となった。
 幸村はそのまま政宗を抱き締める。
「政宗殿…政宗殿…!本当に良かった…!某はもう、心配で心配で…!」
久方ぶりに感じる、幸村の温もり。匂い。それは嫌になるほど心地良かった。
そのまま身を委ねてしまえたら、どんなに良いだろう――――。
政宗はゆるゆると頭を振って考えを打ち消した。
「痛ェ。放せ」
素気なくそう言い放つと、幸村を押し退け距離を取ろうとする。
 その瞬間、幸村は政宗の鎖骨の少し上辺りに紅い痕を見つけた。幸村の表情が強張る。
 その視線に気づいた政宗は背を向けようとするが、幸村は衝動を抑えられず政宗の襟を掴み、着物の袷をがばっと肌蹴た。
 白い肌に散る、無数の朱――――。
「アンタにだけは見られたくなかったンだがな……鈍いアンタでも、これがどういう事を意味するのかわかるだろ」
政宗はそう言いながら襟元をきつく直し、背を向けた。
「……………………」
幸村は狼狽を隠せず、何と言えば良いのかわからない。
「もうアンタとは終わりだ。It's the end.」
幸村の思考は停止していた。全く訳がわからなかった。
 行方不明の政宗が心配で堪らず、やっと会えて喜び舞い上がったのも束の間、その体には陵辱の痕があり、今自分に別れを告げている。
 状況を理解する事を全身で拒絶していた。
 幸村が尚も何も言えずにいると、勝負に片がついた小十郎と佐助が駆けつけて来た。
「政宗様ぁ!!!よくぞご無事で!」
「小十郎……武田の忍も。珍しいcombiだな」
「竜の旦那を心配して駆けつけたんじゃーん。兎に角、無事で何より」
「政宗様、お怪我はございませぬか」
「ん、手が痛ェ」
「なんとおいたわしい……この小十郎、此度の責めを負う覚悟は出来ております。が、今は御身が先決。急ぎ奥州へ戻りましょう」
「Alright」
そこで政宗は幸村に向き直り、こう言った。
「世話ンなったみてェだな。礼は後で送らせる。今日ンところは取り敢えず甲斐へ帰ってくれ。――――じゃあな、真田…幸村」



 政宗達が去った後も、幸村は呆然と立ち尽くしていた。
「旦那、さっきからどうしちゃったのさ。なんか様子ヘンだよ?感動の対面、て感じじゃなかったみたいだけど」
「あ…、いや、一先ず甲斐へ戻るとしよう」
佐助の言葉に我に返り、幸村達もその場を後にした。



   次へ  戻る







×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -