松永が部屋を出てから少し経ち、政宗が抜け出す方法を模索していると、扉が軋みながら開いた。
 また奴が来たのかと身を固くする政宗だったが、その人物は初めて見る顔だった。見たところ、身形からして下男のようだ。
「なんだてめェは」
鋭い眼でぎろりと睨まれ、ひ、と慄いたが、恐る恐る政宗に近づいてきた。
「わわ、私はここの下働きの者で…あの、その、お体を……」
見ると湯の入った桶と手拭いを持っている。
「……そこへ置け。自分でやる」
政宗は手拭いを湯に浸して絞り、体を清める。
 その間に下男は床を掃除していた。政宗は下男の背後から跳びつくと、左手で羽交い締めにし鎖を彼の首に巻きつけた。
 一瞬の出来事だった。
 何が起こったのかわからない様子の下男の首を、鎖でぎりぎりと締め上げる。
「死にたくなけりゃコイツの鍵を外せ」
「かか、鍵は松永様しか持ってませんで。私はお世話を言いつかっただけで……」
青ざめた顔で恐れ慄く様は嘘をついているようには見えず、たかが下男に鍵を持たせているとも考え難い。そう思った政宗は彼を解放した。
 彼はそのまま慌てふためき部屋を出て行った。
――――やっぱ松永から鍵を奪うしかなさそうだな……。
しかし、あの狡猾な松永がこの部屋に来る際に鍵を携行しているかも疑わしく、状況は絶望的だった。

『卿には絶望を贈ろう』

松永の言葉が脳裡に蘇ったが、頭を振って打ち消した。


 それから松永は幾度となく部屋にやって来ては政宗を好きなように犯していった。毎回抵抗は試みるが、例の香のせいで好きなように弄ばれてしまう。
 最低限の食事は与えられていたものの、窓がなく昼も夜もない部屋でただ犯されるだけの性奴のような毎日に、いつしか正気を失ってしまいそうな危惧を抱いていた。


 囚われてから何日経っただろうか。その日も松永は飽きる事なく行為に及んでいた。
 仰向けにした政宗の膝の裏を掴み足を大きく拡げさせ、その中心に彼自身を出し入れしている。
 足から手を離し床に手をつき政宗に覆い被さると、首元に口をつけ、強く吸う。口を離すと、紅い痕が残った。
「白い肌には紅がよく映える……」
酷薄な笑みを浮かべると、政宗の体の彼方此方に口をつけ、己の所有物であると証明するかのように痕を残していった。
 政宗は屈辱に拳を握り締め、ふと、違和感を覚えた。
――――なんで、握れるンだ?
そう言えば、松永は香の効果を「慣れていない者には」と言ってはいなかったか。
 他の部位にも力を入れてみると、筋肉の収縮を感じる。
――――賭けてみるか。



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