赤い婚礼

 村人たちは二人が一緒に葬られた比翼塚に竹筒に入れた花を供えていた。線香を焚き、念仏を唱えた。これは通常ではあり得ないことである。というのは、仏教では情死は禁じられており、この墓地は仏教徒たちのものであるからである。しかし、そこには宗教があった――深い敬慕という信仰が。
 どうして人々がこのような死者に祈るのかと聞かれるだろう。すべての者が二人に祈るというわけではないが、それでも恋人たちは祈ったし、とくに不幸な恋をしている者たちはそうするのである。他の人たちは墓地を飾ったり、また敬虔な祈りの言葉を捧げている。とりわけ恋人たちは同情と救いを求めて祈るのである。私もなぜだろうかと自問せざるを得なかったが、つぎのような単純な答えを得た。死んだ二人がたくさん苦しまなければならなかったからだと。
 このような祈りを促している観念は仏教よりももはるかに古くて、同時にもっとも現代的でもある――「苦しみという永遠の宗教の観念」といえよう。


小泉八雲「東の国から」より「赤い婚礼」


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