鼻をくすぐるような甘い香りが目の前のパンケーキから発せられる。
こういう事さらりとこなしちゃう錫也はすごいなあ、ってすごくすごくおいしそうなそれを眺めつつ感心する。
ああ、さっきご飯食べたのにもうお腹空いてきちゃった…。
あんまり食べ過ぎるのはよくないし、体重に響くだろうな、なんて考えながらも少しずつ少しずつ哉太と羊くんのお腹の中へと消えていくパンケーキに目をやる。

やっぱりおいしそう。


「名前?食べないのか?」

「んー…さっきお昼食べたばっかりだし…」


少しだけ不安そうに問いかける錫也に唸りながら答える。

そっか…なんて悲しそうに眉を下げる錫也を見たらなんだか申し訳なくなってきた。

少しだけならいいかなと私の考えが改まり始めたころ錫也がにっこりほほ笑んで俺が食べさせてあげようか?なんて冗談言うから。
謹んで辞退させてもらったはずなんだけど、どうして結局こうなってるのだろう。


「おいしい?」

「すっごくおいしい」

錫也の持つフォークにささったパンケーキをぱくりと一口で口に含むとふわふわとした触感に思わず顔がほころんだ。

まあ別に食べさせてもらうのが嫌なわけでもないので―だからといって好きなわけでもないけど…おいしいものを食べられた幸せにひたりながら正直な感想を述べる。
そんな私を嬉しそうににこにこしながら眺める錫也を見て哉太と羊くんが呆れた顔をしてることに私が気付くのはもう少し後。




(101226)




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