あ、と声がして夜空に向けていた目線を下におろすと、私の腰かけているジャングルジムから少し離れたところに越前リョーマが立っていた。おおい、声をかけて手を振れば少しの静止のあとにゆっくりとこちらに近付いてくる。リョーマなら無視するかも、なんてちょっと考えてしまったけど、今日はいつもより素直らしい。

「何してんの」

「天体観測〜 星が綺麗だよ」

「ふぅん」

リョーマの視線は、ちらりと空に向けられて、そうしてまた私に向けられた。冬の夜の空気は肌にささるくらいに冷たくて、はあ、と吐き出した息が白く染まっている。ぐるぐるとマフラーを巻き付けて、なんだかかわいらしいことになっているリョーマに、登っておいでよと手を伸ばした。

「……星、見えないじゃん」

「だよねえ」

「何すかそれ…」

「そういったら登ってきてくれるかなあって」

へへって笑って見せると不満気な視線を向けられた。だって折角会えたのに、長い間外にいて冷えきった手をリョーマのほっぺたに伸ばしてみると、その冷たさに驚いたのかびくりと震える。

「ね、リョーマ」

「なに」

「明日も会えるといいねえ」

「……っスね」

約束しないと会えない冬休みに、また明日ねとは言えないから、少しの期待をこめてかけた言葉に思ったよりも素直に返ってきた同意の言葉はじんわりと心をあたためた。


(121224)
HappyBirthdayリョーマ!








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