体調を崩すと何となく気持ちが弱くなるもので、冬だというのにうっすらとかいた汗を拭って、枕元の携帯に手をのばす。メールの受信を知らせるランプがぴかぴかと点滅していて、ぼーっとしながらも慣れた手付きで携帯を操作すると、メールの送り主は岳人だった。

『大丈夫か?』

一言だけのメールになぜだか泣きたくなった。『あんまし大丈夫じゃないかも』普段はこんな風に素直に甘えられないけれど、こんなときくらい、いいよね。送信ボタンを押して枕に顔をうずめると、そのまままた目を閉じて、眠りについた。





「ん……」

ひやりとした感触を額に感じて、ゆっくりと目を開けると、目の前には岳人がいた。ああこれはまだ夢みてるのかな、なんて思って自分のほっぺをつねってみると、ちゃんと痛い。

「おいおい何やってんだよ!」

「夢じゃない…がっくん何でここいるの…?」

「おばさんがあげてくれたぜー」

後で亮とジローもくるってよ、私が聞いたのはここにいる理由なんだけど、意地っ張りな岳人は心配して、なんて絶対言わないんだろうな。きっとメールを見て来てくれたんだろう。ああそういえば私、ついつい昔みたいに"がっくん"って呼んじゃってる。風邪をひくとこういうところも緩くなる。でも、それが当たり前みたいに岳人が接してくれるのがすごく嬉しいんだ。ああ、何も変わってないんだなあ。

「…ありがとね、」

「んー?いいよ、別に」

「がっくんの手、冷たくて気持ちいい」

へへ、と笑って見せると、額にあてられた手はそのまま頭を撫でてくれた。あ、ちょっと顔が赤くなってる。ばちりと噛み合った視線をそらした岳人の耳は、ほっぺたと同じように赤くなってた。

「そ、そういえば起きたらお粥あるからっておばさん言ってたぜ!とってきてやるよ!」

「、やだ!」

ぱっと額から離れた手を咄嗟につかむ。ここにいて、って小さく呟くと、岳人はびっくりしたように大きな目をもっとまんまるにしてから、はあ、とため息をついた。

「ずるいよなあ、こういうときばっか」

くそくそ、お決まりの口癖をこぼした岳人はまたベッドの脇に腰をおろす、そうして私の掴んだ手は優しく繋ぎなおされて、岳人のおやすみ、の声に導かれるようにあたたかな気持ちにつつまれてまた目を閉じた。



(名前!だいじょ…)
(二人とも眠っちゃってるC〜)
(しゃーねえなあ。また後でくるか)
(そうしよっかあ)


(121221)




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