「あ、」

「うわ」

思わず飛び出た声にぱっと両手で口を塞いだ。今のはあからさますぎた。案の定ぶすくれた顔をする泉にはは、と笑ってみせる。私の笑顔絶対ひきつってる。何でこいつがここに、なんて考えるまでもなくて、私と泉の家がとても近いからだ。必然的に帰り道も一緒になる。別に泉のことが嫌いな訳じゃないし、いい友達だと思ってる。いや、思ってた。その"いい友達"の関係性に終止符を打ったのは他でもないこの男なのだ。数日前の出来事が思い出されて、じわじわと耳が熱くなる。


「俺、お前のこと好きなんだけど」


グラウンドで白球を追いかけるときみたいに真っ直ぐで真剣な瞳でそう告げられれば、誰だってどきっとするだろう。ただ私の場合、そのどきどきが長続きしすぎなんだ。現に今だって寿命縮むんじゃないかってレベルの速さで心臓が脈打ってる。人間が一生で脈打つ回数はだいたい決まってるらしいけど、私はそのうちのどれだけを泉のために使ったんだろう。

自然と隣同士に並んで、自転車をおしながらてくてく歩く。沈黙が辛いけど、残念ながら、この状況で逃げる術がぱっと出てくるほど頭の回転はよくない。というか、最近泉のこと半ば無視してるみたいな状態になってたのに、こいつは怒ってないのだろうか。そっと隣の男の顔をのぞきみると、とても難しい顔をしていた。

「い、泉さん…」

「……」

「そのー…最近、あの、ちょっと避けたりしちゃって、申し訳ないなーと思っててですね、」

「あー…」

重苦しい空気にもたえられないし、勇気を振り絞って謝罪の言葉を口にすると、泉は頭をがりがりとかいてそれは別にいんだけどさ、と呟いた。

「え、怒ってないの?」

「や、いきなり言った俺も悪かったっていうか…で、だ、こないだの話なんだけ」

「あー!!!!」

突然大声を出した私にまんまるな目を大きく見開いて何事かと驚いている泉に、やーごめん私コンビニに用あったんだわー!じゃ!とかなんとか早口で言ってその場を去ろうと自転車に跨がると、がしりと手首を掴まれた。やべー逃げそびれた。

「いつでもいいからって言おうと思ったけどなんかむかつくからやめた。正直避けられてたのもいらいらしてたし。返事きくまで離さねー」

「さっき俺も悪かったって言ったくせに!嘘か!いつから表面上だけの謝罪なんてするようになったの泉!」

「俺"も"悪かったっつったろ。お前も少なからず悪い。避けるならもっと上手くやれよ!あからさますぎていらいらすんだよ!」

「理不尽だー!嘘下手なんだからしょうがないでしょ!つか泉私のこと好きとかそれこそ嘘だろ!好きなひとにそんな態度とる!?」

「嘘じゃねーよ」

急に真剣な顔するから、多分また心臓早くなった。気づいた時には目の前に泉の顔があって、唇には柔らかい感触。は、今こいつ何した。

「俺はお前が好きだよ」

で、返事は?そういって笑う泉の笑顔は今までみたことないくらいに男前でどきりとした。あーこいつほんとむかつく。くそ、顔が熱い。





(120224)





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