机の上におかれた携帯が振動して小さく音を出す。身構えていたとはいってもやはりびくりと肩が震えた。あからさまに電話を待って携帯とにらめっこなんて女々しいことをしていたなんて気づかれたくないから、ワンコールの時点でとれたはずのものを暫く鳴らしてから耳にあてる。思った通り、ちらりと見たディスプレイに表示された名前はあいつだった。

「はいよー」

やる気のなさそうな声で応答する。いつもならここで拗ねた用な声が聞こえてくるのに今日は気持ち悪いくらいに明るい。よっぽどいいことがあったのだろうか。

「ねえきいて哉太!あのね今日ね、陽日先生にお前は頑張りやさんだな〜!って褒められたんだ!嬉しいなあ!」

どんな表情をしてるのか分かるくらいに上機嫌な声が耳に届いて少しだけ胸が傷んだ。でも多分今のこいつはすっげー笑顔なんだろうなあとか考えると何かあって泣かれるより全然いいとか思っちゃうあたり重症なんじゃないかなと思う。

暫く続く陽日先生の話にはいはいとか、よかったなーとか、適当な相槌をうっているとぽつり、と小さくてかぼそい声がきこえた。「先生って恋愛とか興味ないのかなあ」

「はあ?いきなり何だよ」

「前に好きな人とかいるのかって聞いたらなんだか困ったみたいな悲しそうな顔して…そういうのよくわかんないんだ、って…」

「ふーん…」

先程とはうってかわって落ち込み気味な声に、どう声をかけていいかわからなくてとりあえずと声を漏らした。まあ俺には彼がどういう意味でその言葉を発したかわからないわけで、なんともいえないから、そんなの努力次第とかなんとかよく分からない答えをしてしまったけど、彼女はそうかなあ、頑張ってみるよ、なんて言って感謝とおやすみの言葉と共に電話を切ってしまった。

通話の終わった携帯をベッドの上に投げて窓をあける。生憎と今日の天気は曇りだけど一部だけ、雲が晴れて星の輝きがのぞいた。気付いたらカメラを持っていて、その星たちをうつす。

カメラをおいて、見上げた夜空に向かって伸ばした手は悲しく宙をきった。




あの星を包むことができたら




身から出た錆さまに提出
(110901)




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