よければ一緒に、そんな風に誉くんにお出かけのお誘いをしてもらったのは明日が休日っていう日の午後。誉くんとは選択制の講義でたまたま隣に座って、それから時々喋ったりしてた。気にかけてみるととってる授業が重なることが多くて自然と仲良くなった。
だけどこんなふうに休日にどこかに行こうって誘われることは初めてで少しだけ戸惑っていると、誉くんは何かに気付いたように小さく声をあげて眉尻を下げて少し困ったような顔でほほ笑みかけてきた。

「あ、でもやっぱり折角の休みだし…ゆっくりしたいよね。」

誉くんは何も悪いことなんてしてないのにごめんねって謝ってくるから違うよって、早く返事出来なかったのはちょっとびっくりしてただけなんだよって伝えたくて私はふるふると首を横に振ってみせた。

「ううん。丁度何しようかなって考えてた。だから誘ってもらえて、嬉しい。」

ちょっと緊張してたのかな。私の口から出た声は少しだけかすれていた。

「それじゃあ明日迎えに行くね」

「うん。」

また明日って声をかけてそのまま帰路につく。
心なしか自分の足取りがいつもより軽いものになっているのに気付いてちょっとだけおかしくなった。


*


明日は何着ていこうか、なんてもんもんと悩んでいたけどよく考えれば私どこに行くのか聞いてなかった。どんな場所に行くのかで洋服もかわってくるし。考え出すと不安になってきて、何を着ていっていいのか本格的に分からなくなってしまった。

これはもう本人に確認した方が安全だよねって事で携帯を握りしめて登録してある誉くんの電話番号を呼び出す。

何度目かのコールのあとはい、と機械を通しているせいかいつもより少しだけ低くめな声が聞こえてきた。

「あ、誉くん?名前です。」

「名前さん?どうしたの?」

「うん、あのね、明日どこに行く予定なのかなって思って」

場所によって洋服が変わるから、って付け加えると誉くんは暫く考え込んだ後どこに行こうか、なんて言うから思わず聞き返してしまった。

「ふふ、明日のお楽しみ、じゃだめかな?」

「え、あ、うん。えと、それじゃあひとつだけ聞いても良い?」

「なにかな」

「すっごく高級なお店とか登山とか、そういう所じゃ…ないよね?」

「あははっ、違う違う。普通に気楽に、お散歩位の気持ちで大丈夫だから」

「そっか!わかった、ありがとう」

今日二度目のまたねを言って電話を切った。

誉くんとお散歩。

まだお散歩ってきまったわけじゃないけどきっとショッピングモールをぶらぶらしたりとかそんな感じかな。

二人で並んで歩いてる姿を想像したら少しだけ胸のあたりがむずがゆかった。



優しさに包まれる

ぽかぽか、陽だまりのよう






(110310)




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