どうやら私はこの阿部隆也という奴と、なんだかんだ縁があるらしい。黒板が少し見にくいくらいの身長の高さで私の前に座る阿部の背中を見て思う。

毎月の初めにあるはずの席替えは、担任の気まぐれでこのあともう少ししたら月が替わるという微妙な時期に行われた。がたがた、ざわざわ、机を運ぶ音とお互いの席を確認する声で埋め尽くされたいつもより騒がしい教室の中で、ふたつ隣にずれただけの私はいち早く腰を落ち着けて、あたりを見回す。小学校とは違ってさすがに隣同士席をくっつけることはなくなったけれど、やっぱり近くの席に誰が座るかは気になるもので、そわそわしながら隣人の到着を待った。

ふっと、視界に男子の制服が飛び込んできて、あ、と二人の声が重なった。

「おす、」

「なんだ阿部くんか〜よろしくね?」

「なんだ、って、ひでー言い方。よろしくな」

小さく笑って見せた阿部に、驚いた。笑った顔、初めて見た。そうつぶやいた声は教室の喧騒にかき消されて阿部の耳には届かなかったらしい。何?と聞き返された言葉には何でもないよと返した。

「授業中、当てられたら起こしてあげるね」

「できれば当てられる前に起こしてくれ」

「無理だよ私エスパーじゃないし」

やっと全員が落ち着いた教室で、阿部は机に突っ伏した。筋肉のついた腕が彼の顔を隠す。よっぽど眠いのかすぐに寝息をたててしまった阿部の背中に、がんばれ、と言葉をかけた。









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