「先生、頭が痛いので少し保健室で休んでてもいいですか?」

「おー、大丈夫か?きついようだったら無理せずそのまま帰れよ!」

「はい、ありがとうございます…」

授業中、急に手をあげたあいつに皆の視線が集まる。少し青ざめた顔を見れば、その言葉は嘘じゃないだろうと言うことはすぐに分かるだろう。大丈夫か?隣の席からこっそりと声をかけると、うん、と小さく頷いた名前の様子から見るに、朝の出来事を忘れて返事をしてしまうくらいにはやばいらしい。さっきまで目も合わせなかったくせに。

その足取りはふらふらとしていてあぶなっかしい。おいおい本当に大丈夫かよ、心の中の突っ込みは、あいつには届かないけれど。

私のことなんか好きじゃない、そう言ったときの名前の顔が頭から離れない。ひどく困惑して、どうしていいかわからなくて、そんな、表情。やめてほしい、とそんな声が聞こえてきそうで。きっと友達のままでいたいと、そんなことを考えているんだろうってことは、よくわかる。それが俺と普通に話せなくなるのが嫌だとか、そういう理由だったら少し嬉しい。けど、もう気付いてしまったものはどうしようもない。
俺の気持ちに、あいつが笑って応えてくれたなら、どんなに幸せかと、そんな風に思う。

いつから、なんてそんなのはよくわからないし、どこが、って聞かれてもうまく答えられる自身はないけど。ふっと湧き上がったこの感情は、確かなものだと、断言できるのだ。

そんな風に考えてたら、いてもたってもいられなくなって、

「先生!腹痛いんで保健室行ってきていいっすか!」

「おー気を付け…って犬飼!腹痛いんなら走るな!!!仮病はサボりだぞー!」

勢いよく立ち上がった後に理由づけもそこそこに教室から飛び出す。どう考えても体調の悪い奴の出て行き方じゃないのは重々承知したうえで。後ろから聞こえてくる先生の声は、申し訳ないけど今は無視させてもらいます!

さあ、走れ、走れ、ゴールはすぐそこ。








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