そわそわと時計を気にしながら、辺りを見回す私は、周りから見たら大分挙動不審だと思う。昨日の夜は、何を着ていこうか決めきらなくて、片っ端から洋服を引っ張り出して鏡とにらめっこしていた。お陰で部屋の中はひどい状態になってしまって、お母さんからも少しだけ怒られた。そのあとも目がさえてなかなか眠れなかったというのに、朝は目覚ましをセットした10分前にはしっかり目が覚めて、楽しみにするあまり待ち合わせの30分も前についてしまった。

「あ、」

ふと視界の端にとらえた赤色の髪の持ち主、間違いない。
きょろきょろと視線を動かしてこちらに向かってくるのは、菊丸先輩、だ。先輩!と声をかけると、私の声に反応してこちらを向いた菊丸先輩とばちりと目が合う。にこりと笑った先輩は、ひらひらと手を振って駆け足で私に近付いてくる。私服の先輩を見て、やっとこれが夢じゃないんだって実感できた。

一昨日、先輩からメールがきたときには本当に都合のいい夢を見ているんだと思った。今度の日曜、練習休みだからよかったらこないだのお礼させて、なんて、了承の返信メールを送るまでに何度頬をつねったことか。

「ごめん、待たせちゃったにゃ〜」

「あ、いえ、気にしないでください!」

私が早く着きすぎちゃっただけなんで、と言葉にしてから気付く。ここは普通私も今来たところですから、って言うとこだ。絶対。しかも早く着いちゃったことを自分でばらして、ばかだ。これじゃあなんだかすごく張り切ってるみたい。…実際、そうなんだけど、それとこれとは話が別。

「そんじゃ、いこっか!」

「はい!」

子供だなんて思われないように、少しだけ背伸びした洋服。先輩と私が並んで歩く姿が、お店のショーウインドウに映り込んでいて、なんだか少しむずがゆかった。



06.甘酸っぱいレモン味

120209






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