あのあと、動転しまくった私がやっと口にした言葉は、なんでもないです忘れてください!だった。本当に何がおかしいのか、笑いをかみ殺していた桃城くんは、その言葉を引き金に大きく噴き出して笑った。それにつられてなのだろうか、菊丸先輩も、口元を手で覆って笑いだした。私は、なんで笑われているのかがわからなくて、えっと、とか、あの、とか顔を真っ赤にしながらすぐにでも逃げ出してしまいたい衝動にかられた。恥ずかしさがピークに達したころ、笑いのおさまった菊丸先輩は何やらごそごそとポケットをあさりだして、あった、とつぶやいた。その手に握られていたのは、携帯電話、だった。
何が何だかわからないうちに、菊丸先輩と、そして桃城くんとも、メールアドレスを交換して、じゃあ今から部活だから〜!と、去っていくふたりの後ろ姿を、だからジャージだったんだなあなんて思いながら見送った。














「またね、だって」

ぼそりとつぶやいて、電話帳に登録された名前を見る、菊丸先輩、とかかれたそれは、なんだかきらきらと光って見えて、胸のあたりが少しだけ、むずがゆかった。
さっきから、文字を打っては消してを繰り返して、いまだに初めてのメールを送信することができないでいる。普段は絵文字とかいっぱいは使わないから、どのくらいが一番いいのかがわからない。あんまり使いすぎても男の子には嫌がられちゃうかもしれないし、でも、全く使わないのもなんというか、女の子らしさ、が無いかな、なんて考えだすと止まらない。結局、いつも通りの少しの絵文字と、改めてのお礼、それから謝罪文を打って、送信した。

なんだかすごく体力を使った気がして、ぼすりとベッドに倒れこんで枕に顔をうずめる。十分ほどしてから、うとうとしかけていた私を起こすように携帯が鳴った。メールの受信を告げるランプの色を見て、少しだけ身構える。

『こっちこそありがとね!お友達なってくださいって嬉しかった!よろしくにゃ〜』

最後にあったにくきゅうのマークが、なんだかすごく菊丸先輩らしくて思わず噴き出した。




04.手遅れみたいです

120128





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