朝の挨拶が飛び交うなかで、少し気だるい体を動かして歩を進める。1日ぶりの学校は、真新しいものなんてもちろんなかったけれど、それでも欠席した次の日の登校は、どことなくそわそわするもので、きょろきょろと少しだけ挙動不審になりながら靴場の前に立つと、漫画だったらばしーんと後ろに効果音がつきそうな強さで背中を叩かれる。

「おはよ!」

「おはよ、ていうか、痛いじゃんか!」

「ごめんごめん、それより昨日、どうだった?」

適当に謝る友人にじとりとした目線をむけると、それをものともしないみたいに笑顔を見せて、彼女は問いかける。どうもこうも、昨日は勿論ずっと寝ていたわけだから、別段彼女がこんな風に珍しく楽しげに答えを待つような出来事は私にはなかったはずだった。だから当然、何が?と質問に質問で返すわけだけど、それをきいた彼女は、とぼけちゃって、なんて言って私の肩を叩くのだ。

彼女のなかでは私が何かあったにも関わらずそれを秘密にしている、ということになっているらしい。何がなんだか。

「や、ごめんほんとに何もなかったけど…」

「え?だって…」

来たでしょ、菊丸先輩。そう言った彼女の言葉を脳まで到達させるのに、随分時間がかかった。つまり、菊丸先輩が、私の家に来た、とか、そういうこと?やっと理解して私が、はあ!?と大きな声をあげるのと、桃城くんが私達におはようと声をかけるのは、全く同時の出来事だった。



10.半透明な真実

120822






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