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昨日の夜に、眠たい目をこすりながら選んだいつもより少しだけかわいいシルエットのワンピースの裾をつまんで鏡にうつる。くるりとまわってみせるとふわりと揺れる髪の毛が、なんだかすごくくすぐったい。ぴんぽーん、高い音が響いて、聞きなれた声が玄関のほうから聞こえてくる。時計を見ると約束の時間まであと数分もなくて、あわてていつもとは違う色つきのリップをひいて、ワンピースの裾に初めて使う香水をワンプッシュ。パタパタと階段を降りていくと、玄関の声は大きくなっていって、二度目のチャイムがなった。靴箱の上の鏡でもう一度笑顔の練習をして、扉の取っ手に手をかける。

「名前ちゃん、出てこないねぇ…どうしたのかな?」

「あいつの事だから、寝坊でもしてんじゃねえのか?」

「失礼な!女の子の準備は時間がかかるものなんです!」

がちゃりと扉を開けて、開口一番、失礼なロヴィの言葉に抗議する。あーあ、かわいく、待たせてごめんね、って言うつもりだったのに!

「おはよ、遅くなりました」

「おはよ〜名前ちゃんかわいい〜!」

「へへ、ちょっと頑張ってみました!」

「ふ〜ん」

「弟のこの可愛さに比べてこの兄ほんと可愛くない…」

「お前よかましだろ」

はんって鼻で笑われて、そのばかにしたような顔にむかついたので、後ろから頭をぽかんと叩く。そのままロヴィを追い越して、後ろから聞こえる文句を無視してフェリの手を握った。

「もうあんなの置いて行こ!」

「兄ちゃん照れてるだけだと思うよ?今日の名前ちゃんすっごくかわいいから」

「わかってるよ〜。ただ今回くらい素直になってくれてもいいのにって、」

思っただけなの。せっかく頑張ったのにって、拗ねたように呟くとフェリは眉を下げて笑ってみせて、私の頭をぽんぽんと撫でた。たまにこうして大人の顔を見せるフェリはロヴィなんかより全然お兄ちゃんらしい。

「ヴェー、でも置いてくと兄ちゃん拗ねちゃうよ〜」

「もーしょうがないお兄ちゃんだなあ」

二人して顔を見合わせて笑って、後ろでいじけているロヴィの名前を呼ぶ。早くしないとおいてっちゃうよ、そう声をかけると、見るからにふて腐れた顔でこっちに近づいてくる。横に並んだロヴィとは、フェリの反対側で手を繋いで、恥ずかしがって逃げようとするその手をぎゅっと握って離さない。

「じゃあいこっか!」

「はーい!」

「………」

「ロヴィ?」

「……くねぇ、」

「え?」

「悪くねぇんじゃねーの!いつもと雰囲気違って、か、かわいい、と、思う!」

「!」

びっくりした、ものすごくびっくりした、やけくそみたいに言いはなったロヴィの顔はゆでだこみたいに耳まで真っ赤に染まっていて、フェリが、兄ちゃん大丈夫?なんて心底心配そうにきくもんだから、おかしくなって吹き出してしまった。かわいくないと思っていたお兄ちゃんのほうにも、随分可愛らしいところがあったみたいです。

「ありがと、」

「別に」

「兄ちゃんの素直さは1分ももたないねえ〜」

「うるっせえばか弟!」

「ヴェ〜ごめんって〜暴力反対〜」

さて皆でどこへ遊びに行こうか。



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130211/リクエストありがとうございました!




















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