tkrs/不破さん



閉店間際のレストランに不破さんが腹減ったからふらりと現れた感じです。







 やっぱり厨房あっついな…髪、結んでくればよかった。
 火の前にいるとその熱が伝わってやっぱり暑くなる。少しでも涼もうと後ろ髪を無造作に掻き上げて、そのまま火が通るまでとじっと待つだけのフライパンと睨みあう。ゴムも忘れたしなあ…でもずっと髪を持ってるのも辛いし、と髪から手を離そうとしたとき突如、するりと腰に腕を回された。同時に手から離れた髪がはらりと落ちる。
 その筋肉質な腕は、言わずもがな不破さんの。
 厨房に入りたいって言うから、もう閉店だしと厨房に入ってもらったんだった。端っこで見ていたはずが、私の気付かないうちにすぐ後ろまで来ていたらしい。それで腕を回されて……ええと、その、けっこう密着している気が…。

「……あの…不破さん?」

 呼びかけても返事はなくて、密着した厚い胸板が上下に動くのがじかに伝わる。
 恐る恐るといった感じだけれどほぼ真上にある不破さんを見上げると、彼は私をじっと見つめていた。突如交わった真摯な眼差しに一瞬で心臓が飛び跳ねる。その瞳には野性味が混ざっている気もする。
 ど、どうしたの不破さん…!
 視線がぶつかったのにも、真摯な瞳がかっこよかったのにも、その野性味にもどぎまぎして咄嗟に顔を背ける。心臓がものすごくうるさい…!私の心臓のうるささとか恥ずかしさとか、不破さんはきっと何も感じ取っていないんだと思う。不破さんは普段と変わらない冷静な声で「なあ」と私を呼びかけた。

「お前、誰にも見せんな」

 ……私、何か見せたっけ?

「見せんなって……何を?」

 何か見せた記憶もなくて首を傾げる。
 不破さんを見上げたいけれど、またさっきの瞳とぶつかると思うと更に心臓がうるさくなるって中々見上げられないし、でも視線を落とせば逞しい腕が目に入ってそれだけでもどきどきするし…私は一体どこに目を向ければ。照れと羞恥で目が泳いでしまいそう。

「俺だけ見ればいい」

 吐息とともに落とされた囁きに熱が含まれていた気がするのは、気のせい?いや、うん気のせいにしておこう…!
 声音に含まれた熱に気付かないふりをした私は意を決して不破さんを見上げる。ああ、またあの真っ直ぐな瞳とぶつかった…!

「あの、だから、どこを」

 必死に問おうとする私を遮るように、不破さんの空いた手が首にかかる私の髪を片側へ流す。指先が触れただけでちょっとだけ身体が跳ねて強張ってしまう。思わずまた顔を逸らしてしまって、その隙をつくように不破さんは少しだけそっと屈んだ。
 そして──首に暖かい何かが触れる。

「他の男に、見せるなよ」

 肌に触れるほど間近に唇が這う。熱い吐息が首筋をくすぐった。
 ちょっ…!不破さん何を……!
 かっと顔に熱が集まる。とても恥ずかしくて身じろぐけれど不破さんの力には到底敵わない。私を抑えるように、髪を払った不破さんの手が私の肩を抱く。最初にうなじに触れた唇が這うようにゆっくり下がった。時折ちゅ…と甘い音を響かせ、それに私がかすかに身じろぐと不破さんは楽しそうに笑う。
 いよいよ私も怒るよ、と言おうと唇を噛み締めると首筋を這っていた唇がふいに離れる。あ、不破さん私を解放してくれる?そっと安堵の息を漏らしかけたそのとき「約束だ」とすぐ耳元で、囁かれる。それはたしかに甘い雰囲気を秘めた声。

「不破さん…!」
「なんだ」

 がんばって不破さんの力に反抗して身体を反転させる。すると意外と距離が近くて、振り向くと不破さんの顔がドアップだ。もう!今の私は怒ってるんだぞ!今日の不破さんはよく意味が分からない。急に見せるなって言うし、どこって訊いても言ってくれないし……その…………何となくは、分かっちゃったけど……でもその意味が分からーん!
 私の気持ち的には目を三角にしてものすごく怒ってる感じなんだけれど、どうも不破さんの目にはそう映ってないみたい。ふっとものすごく柔らかく微笑まれた。うう…っ、その笑顔にも負けそう…。その微笑みに怯んで思わず口を噤んでしまう。そんな、普段見せない優しい顔見せられたら怒れないじゃないか…!
 不破さんて、人の隙をつくのがものすごく上手なんだと思う。
 優しい微笑みに見惚れている間に不破さんは更に顔を近付けてきて、頬に唇を押し当てた。

「……!ふ、不破さ……!」

 一瞬思考が停止した。けれど、すぐに我に返った私は戦慄く。
 不破さんは片手で私の手を取り、その手首へまた唇を押し当てる。そしてそのまままた喋って──

「なあ、お前──」
「ハァーイ!キョウヤさんが来たぜ可愛い子ちゃ…………」

 沈黙が流れた。私の手首に唇を押し当てたままの不破さんに、ものすごく彼に密着させられている私、そしていつものようにテンション高く厨房へ入ってきた伊達さん。表現できない空気が流れて、三人とも固まった。その中でも一番冷静だったのは不破さんだと思う。普段と変わらない表情が、伊達さんを見つめていた。
 その痛い沈黙を破ったのは、不破さんだ。

「どうした、キョウヤ」
「──どうしたもこうも、何やってんだケント!お前がどうした!」
「何って……見れば分かるだろ」
「それはあれか、襲おうとしてるってことか?!早く離れろ!」




てな感じで力尽きました。
以下は会話のみです




「ケントが変なことしなかった?」
「ええ、あ、まあ、はい」
「その反応……何かあったな。ケントに何された?」
「あの、それは、その」
「約束だ」
「約束?あの体勢でか?どんな約束だ、言ってみろケント」
「……見せんなって約束した」







ってな感じで趣味と妄想全開です!!!!!
後悔はしてない!!!!!!!!!

不破さんはこのあと伊達さんにがっつり説教されました。

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