ぼーっと見つめていた。可愛い彼女。 仕事を忘れて、ただぼーっと。 可愛いなあ…なんであんなに可愛いんだろう。本物のアイドルたちが目で追うくらい可愛い彼女は私のなかのアイドル。ほぼ同時期にこのレストランに来て、一緒に働いている彼女の表情はくるくる変わって、けれど浮かんでいるのは笑顔とかアイドルたちにいじられて照れる顔。暗い顔なんて見せない。──ああもう!可愛いな!! 「…い」 「私のエンジェル…!」 「おい」 「ひっ」 テーブルを拭きながら野獣組のアイドル二人、伊達さんと神崎さんにいじられている彼女を見ていると不意に声をかけられた。……うん?その前に私、何かやばめなこと口走ってなかった?気のせい?気のせいにしていいかな?心の声がおもいっきり漏れてた気がするけれど、ま、いっか。突如した声に驚いて小さく悲鳴を上げてばっと振り返ると、野獣組の残り一人、不破さんがいた。相変わらず背高いなあ…。布巾を片手に見上げると、静かな瞳は私を見下ろす。なにかを訴えるような視線だ。 「…あの、不破さん?」 「肉」 「え?」 「肉、食いてぇ」 なるほど、彼は腹ぺこりんなわけか。早く食べたいけど、ほかの二人が彼女に構ってるから我慢出来なくて私にきたわけね。空腹を訴える瞳で私を見つめる不破さんに思わずくすりと笑ってしまう。元気がなくなった熊みたい。 「いつものジャンボステーキでいいですか?」 「ああ。頼む」 注文を受けて厨房へ戻る。 ようし。今日は特別に人参でリボン作ってあげちゃうぞ! |