最近電車でよく隣になる女の子がいた。脱色して染めたであろう金髪をツインテールにしている女の子。制服を見るところ柳と同じ中央高校らしい。最初に隣になったときは彼女の寝言に思わず突っ込んでしまったとき。それ以降なんの巡り合わせか何度か隣になるようになった。隣になるごとに彼女が気になって観察しているうちに、ほぼ毎回彼女が眠っている理由がわかった。どうやら彼女はラクロスをしているらしい。それなら毎日ハードな練習をしているだろうから眠くても仕方ないと思っていたある日。隣に彼女が座った。今日は珍しく起きていたから、自分でも何を思ったのかわからないが話し掛けていた。
「…ねぇ」
「……」
「ねぇ」
「……え、私ですか?」
「うん」
俺、見えないものに話し掛けるような人に見えた?と聞くとぶんぶんと首を振った。
「すみません。でも話し掛けられると思わなくて」
「まあ、俺も悪いよね。ごめん」
「いえいえ」
寝言の段階ではどんな娘だろうと少しびくびくしていたのだが、この娘は自分の思っていたよりいい子なようだ。少なくとも、自分の周りの女よりは。
「あの、前にすごい寝言言ってましたよね」
「あー、本当のこと言っていい?」
「はい?」
「あれさ、君の寝言がすごくて思わず突っ込んじゃったんだよね。結構我慢したんだけど」
「え!?うそ!」
当然なのだが自分の寝言を覚えていないらしく、慌てだす彼女にその内容を告げると。
「…恥ずかしい…超恥ずかしい…。なに、げんこつ飴って…」
と耳まで赤くして手で顔を覆う。
その様子がなんだか、不覚にも、とてもかわいい、なんて思ってしまって。
「え、あ、えーとさ、多分、俺しか聞いてないから」
「聞かれてたの自体が恥ずかしいです…」
下手くそなフォローにまた恥ずかしそうにする。やばい、この子可愛すぎるだろ。
そう思ったら思わず。
「じゃあ、俺と君だけの秘密な」
とめったにしない笑顔をして頭をぐりぐり撫でてしまった。
「「あ、」」
同時に声を上げる。瞬間手をばっと離す。俺はなんてことを。
「ご、ごめん!」
「あ、いえ…」
それからしばらく沈黙が流れる。が、気まずい空気に耐えられなくて話題を振る。
「今日は、寝てないんだね」
「今日は、練習早く終わったんで」
そんなとき、運が良いのか悪いのか。降りる駅に着いてしまった。降りようと立ち上がったとき。
「「あ、あの」」
「「……」」
「あのさ、」
「…はい」
「…また。俺は松本たかひろっつーんだ。じゃ」
なんだか気恥ずかしくて口早に言って降りる。ドアが開いて降りる寸前。
「わ、私はっ――」
聞こえてきた声に、ドアが閉まりかけたときすこし茶化して、
「じゃあ、また会おうな。めーちゃん」
と言ったのは、彼女に届いただろうか。


この出来事に敢えて名前を付けるならば。
恋のはじまり、とでも付けたらいいのだろうか。
そんなこと、俺はまだ知らない。


(おい)
(お、としゆき)
(さっきの女の子と知り合いか?)
(ああ、まあそんな感じ。かわいいよな)
(あれ、うちのクラスのやつの妹だぞ)
(は?)


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たかめーを目指してみました。
駄文ですみません。そもそもお題にあまり添えられてない…。たかめー好きなので増えて欲しいなーと願いを込めてかかせていただきました。

では、この度は参加させていただきありがとうございました



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