「奈古さん」
「なに」

バイト中俺が声かけると奈古さんは不機嫌そうに返事した
俺は奈古さんに勢いよく頭を下げる

「凸面鏡の中の美少女に会わせてください!!」
「殴るわよ」

奈古さんは血管を浮かせながら仕事しろ仕事。と続け、仕事を再開させる
でも俺はどうしてもあの凸面鏡の中の美少女に会いたい
どうしてこんなにも執着するのか自分でも分からないがとにかく会いたい

「奈古さん」
「なに」
「一回でいいからお願いっ!」
「しつこい!」

俺が凸面鏡を手渡し何度も頼み込むと奈古さんはブツブツ言いながらも承知してくれた

「一回だけだ」

舌打ちする奈古さんに俺は首をブンブン縦に振る
髪を下し不機嫌そうな顔で映る凸面鏡の美少女、もとい奈古さん
うん、可愛い
俺が美少女な奈古さんに会えた喜びを噛み締めている間に奈古さんは仕事を再開し始めていた
あ。と俺は一つのことに気が付く
俺が凸面鏡の中の美少女に執着していた理由に

「奈古さん」
「ウザい」
「俺奈古さんのこと好きかも」

俺の言葉の後ガシャンという金属音が厨房に響く床を見るとつい先ほどまで奈古さんが手にしていたバットが落ちている

「奈古さん?」
「…うるさい」

奈古さんは顔に手を当てている
指の間から見え隠れする肌は赤く染まっている

「もしかして照れてる…?」
「う、うるさい!」

真っ赤な顔して強がる奈古さんが可愛く見えた
凸面鏡越しでもないのに可愛く見えた、やはり俺は奈古さんが好きらしい
凸面鏡越しとか関係なしに奈古さんが好きらしい

「奈古さ…」
「ただいまー」
「…空気読めよ」
「なにが?」

返事を聞こうとしたが、タイミング悪くヤスノリが配達から帰ってき、俺の言葉は遮られた
不思議そうな顔をしたヤスノリだが、あ。凸面鏡。と傍にあった凸面鏡を手に取る

「奈古さん、凸面鏡の中の美少女にもう一度会わせて」
「ヤスノリ、それはダメだ」

少し前の俺のようなことを言うヤスノリを俺は制する

「なんで?」
「なんでも。ダメ」

ヤスノリを止めた理由は簡単、ただの俺の独占欲
俺は奈古さん自身が好きだから凸面鏡とか関係ないけど、可愛い奈古さんを誰かに見られるのは嫌だ
まだ付き合っていないのにこの独占欲、我ながら驚いた
でも本当にこれだけは譲れない、誰にも

「ふーん。あ、そういえば奈古さん。さっきタダクニと何話してた?」
「黙れ。仕事しろ」
「そーだぞ。仕事しろ、仕事」
「お前もだ」
「はーい」


これだけは譲れない



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男日企画、「男子高校生じゃなくても一緒に過ごしていいじゃない!」様に提出
元は唐羽予定だったのですが、気づけば何故かタダクニ×奈古さんというマイナー(?)カプになってしまいました。
個人的にはどちらも好きです、タダ奈←ヤスも大好きです、はい。
唐羽とか唐妹とかも書きたかったなぁ…。





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