KOH虎徹×ウロバニ監禁もの
バニーがアホ
虎徹がゲス
ハンサムでスタイリッシュなウロバニは居ません




















『本日未明、犯罪組織ウロボロスの幹部、バーナビー・ブルックスJr.が保護されていたシュテルンビルト市立病院から逃亡しました。バーナビーは武器を所持している可能性があり、ハンドレッドパワーのNEXTでもあるので大変危険です。見つけた場合は決して刺激せず、速やかに警察に連絡して下さい。繰り返します。本日未明――』


いつものようにコーヒーを飲みながら朝の情報番組を観ていると、こんなニュースが流れてきた。
テレビの画面いっぱいに、やたら整った顔立ちの金髪の青年の顔写真が映る。その下には、「指名手配中」のテロップが。
リモコンでテレビの電源を消し、リビングを後にして寝室へ向かう。
キングサイズの真っ白なベッドで眠るその寝顔は、先程テレビで流れた写真と全く同じ顔。

現在指名手配中の、バーナビー・ブルックスJr.だ。




ドールハウス




事の発端は、約1ヶ月前のテロ事件だった。

”ウロボロス”を名乗る金髪の美しい青年、バーナビー・ブルックスJr.がシュテルンビルトの電波をジャックし、刑務所に収監されている

同志、ジェイク・マルチネスの解放を要求した。

テレビに映った彼の姿を一目見て、どうしても彼が欲しいと思った。
あのすました顔を恐怖に歪ませたい。思い切り手酷く扱って、やめてと懇願する姿が見たい、と。

バーナビーが市民を人質に取った為、一時的にジェイクを解放せざるを得ない状況に陥ったが、すぐにヒーローを総動員して一件落着。
ジェイクが殺傷能力が高いNEXTだった為、政府から場合によっては殺してしまっても構わないとのお達しが出る程だった。
もちろんその場面はHERO TVでは放送しなかったが、見せしめの為にバーナビーの前でジェイクを殺してやった。
崇拝するジェイクを目の前で殺されたショックで気を失ったバーナビーは、組織の重要参考人だということもあり病院で保護されることに

なった。
しかし、病院側はテロリストでしかもNEXTの能力を持ち合わせているバーナビーの力を恐れ、意識の無い彼に、記憶を一時的に錯乱させる

強いドラッグを打ち続けた。
その結果、バーナビーは事件や組織の記憶を全て失くしてしまったらしい。
その事実を知った政府は、バーナビーから組織のことを聞き出せないのならば彼を処分し、ウロボロスという存在を無かったことにしてし

まおうと決めた。
社長を通してその情報を手に入れた俺は、欲しくて堪らなかったそのテロリストを、殺される前に自分のモノにしようと考えた。
そして昨日、深夜に病院に忍び込んでバーナビーを攫い、引っ越して間もないゴールドステージの自宅に連れて帰った。この家は、ジェイ

クを倒したことでKOHになってすぐに購入した豪邸だ。
朝、病室からバーナビーが居なくなって病院は大パニック。騒ぎは街中を巻き込み、バーナビーは一夜でシュテルンビルトのお尋ね者とな

ってしまった。


そして、今に至る。

バーナビーはショックの所為か強いドラッグの所為か、一向に目を覚まさないが、ちゃんと自分で息をしているし心臓も動いている。動い

ている時も作り物じみていたが、こうしていると本当に人形みたいだ。
今、ずっと自分のものにしたかったバーナビーが手に入った。ずっと欲しかった玩具が手に入った時の子供は、きっとこんな気持ちなのだ

ろう。

ただ眺めているだけではつまらないので、艶やかな金髪を指に絡めて遊ぶ。見た目通り柔らかく、とても触り心地が良い。
真っ白で陶磁のような頬をそっと撫でると、整った眉がピクリと動いた。
そして髪と同じ、蜜色の睫毛で縁取られた瞼がゆっくりと開き、エメラルドグリーンの瞳が俺の顔を映した。


「…ん……ぁ…」

「お、目が覚めたか?」

「………?」


バーナビーは何回かぱちぱちと瞬きすると、俺の顔を見つめたり、部屋を見渡したりと、何やらきょろきょろしている。
その姿は警戒する小動物のようで、とてもテロリストには見えない。


「ぁ、う、」

「ん?なんだ?」

「…………っ、」


バーナビーは口をぱくぱくさせて、自分の喉を指差し、必死に何かを訴えようとする。
しかし喉から出るのはあ、とかう、とか意味の無い音ばかりで、何も伝わらない。
……もしかして。


「お前…声が出ないのか?」

「っ………」


バーナビーは泣きそうな顔でこくん、と頷く。
それもそうだ。1ヶ月も寝たきりで、何も喋らなかったら声も出なくなるだろう。
とりあえず水分を摂らせようとミネラルウォーターのボトルを渡すが、それも手をすり抜けて落としてしまう。どうやら筋肉も衰えてしま

っているらしい。
仕方ないので、ボトルを持つバーナビーの手を支えて少しずつ水を飲ませてやる。
水を飲みこむ度に上下する喉仏を見て安心した。

1口ずつゆっくり飲ませてやり、水がボトルから無くなる頃には空のボトルなら握れるくらいまで回復した。
最後の一口を飲み込んだところで声が出るかと聞くと、小さくこくりと頷いた。


「…ぁー……、あ、」

「ん?」

「…おじさん、だれ……?」

「俺?俺は鏑木虎徹。虎徹でいいぜ」

「……こてつ」


バーナビーは俺の名前を呼んで、ふわりと花が綻ぶように笑った。
その無垢な笑顔を見て、ああやっぱり記憶が無いんだなと思う。
もし記憶があったとしたら、目の前で自分の愛する人間を殺した奴に、こんな風に笑いかけたりしないだろう。


「お前は?自分の名前言える?」

「僕は………、あの………わかんない…」


途端に、涙でじわりと濡れていく翠色の瞳。
なんだか悪いことをしてしまったような気持ちになって、小刻みに震える体をぎゅっと抱き締めた。
初めて触れたバーナビーの体は壊れそうな程に細く、少しでも力を入れたら折れてしまいそうだ。


「…自分の名前、思い出せないのか?」

「っ……ぅ、ぅ、んっ」

「そうか…じゃあ…うーん、俺が名前付けてやるよ」

「ん…っほんと………?」

「ああ。んー…どうすっかなー…」


なんだかペットに名前を付ける感覚だ。

一旦体を離し、バーナビーの顔をまじまじと観察してみる。
透けるような白い肌に、薔薇色の唇、そして宝石のような瞳。まさに絵に描いたような美青年だ。
不安そうに揺れる瞳の端が少し赤くなっていて、うさぎみたいだ。
うさぎ…ウサちゃん…ラビット…んー……


「バニー、でどうだ?」

「……ばにー?」

「ああ、可愛いウサギちゃんって意味。ぴったりだろ?」

「バニー…うん、ぼくバニーがいい!」


涙で濡れた目尻を優しく拭い、柔らかい髪をあやす様に撫でる。
この極上の美青年をオモチャに出来ると思うと、思わず口角が吊り上がった。


end


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -