僕の恋人は噛み癖があると思う。


ジュースを飲んでいる時は気付いたらストローを噛んでぺったんこにしているし、氷もガリガリ噛んでいる。
キャンディや棒アイスだって舐めないですぐに噛んでしまう。

行儀が悪いからやめて下さいと咎めたことがあるが、癖というものはなかなか治らないから厄介なもので。

気付けばいつでも何かしら噛んでいる気がする。
そう、いつでも。









「ふあっ……ぁ、あぁ、ん…」


広いベッドの上で、シーツをぎゅっと握り締め押し寄せる快感に堪える。
四つん這いの体制で交わるこの体位はお互いの顔が見えないが、”犯されている”という感覚に、心の奥底に眠っていた被虐心を擽られて結構好きだ。
大きな手で腰を掴まれ、乱暴に揺さぶられれば甲高い嬌声が止まらない。

はしたない、と自分でも思う。



「おいバニー、こっち向け」

「?ふっ……ぁ…んっ、」


バックの状態で貫かれたまま顔だけ後ろに向けると、唇に噛み付かれた。
そのまま激しく舌を絡められ、必死でそれに応える。
キスの最中も律動は止まらず、息がしづらくて酸欠になりそうだ。

苦しい、苦しい、でも気持ち良い。
頭の中がぐちゃぐちゃ。



「!、いっ……」


がぶり。

やっと唇が放されたかと思うと、そんな擬音が付きそうな程深く、強く、首筋に噛み付かれた。
文句のひとつでも言ってやろうと振り向くが、感じるトコロを突かれてそれは叶わなかった。



「ひっ…ぃ、痛っ…!やめっ、やめて、やめて下さい…っ!」



肩や二の腕、肩甲骨にも次々と噛み付かれ、悲鳴のような嬌声が上がる。
痛い痛いとどんなに訴えてもやめて貰えず、更に傷口を抉るように噛み付かれた。

獣のようだ、と思う。


キスマークなんて生易しいものではなく、獣が自分の所有物にマーキングするような。



「本当にやめて欲しいか?」

「ひっ、あ……当たり前っ、です……!なん、でっ」

「だってお前さあ、」

「いっ…!ぁあうっ!」



ガリ、と先程噛み付かれた首筋に歯を立てられる。
柔らかい肉にギリギリと犬歯が食い込み、あまりの激痛に涙が出た。



「噛む度にめちゃくちゃ締まってる。気持ち良いんだろ?」

「んっ、ひ……ぁ、あ…ッ」

「なあ、どうなんだよ?」


散々痛めつけられた首筋を、今度は慰めるように舐められる。
甘い快感に酔っていたらまた深々と噛み付かれ、その繰り返し。
絶え間なく与えられる刺激にクラクラした。


「きもちいっ…きもちい、ですっ!」

「やっと素直になったな…っ」

「はあっ、ぁん、もっと、してぇっ…」

「っ…!はいはい」

「ひぁあっ!あっ、〜〜〜〜〜っっ!」


ぐりぐりと最奥を抉りながら、また首筋に噛み付かれる。
度が過ぎた快感と痛みに頭が真っ白になった。


奥に彼の熱い飛沫を受け止めながら、意識が薄れていくのを感じた。








朝、東向きに設計された窓から差し込む光で目が覚めた。
とりあえず時計を確認しようと体を起こすと、それだけで体中に鈍痛が走った。


「!い、たっ……」


いつもの腰の痛みに加え、体中がずきずきと痛いのは、昨夜散々付けられた傷のせいだろう。
改めて自分の体を見ると、それはもう目を逸らしたくなるくらい酷いことになっていた。

体中噛み跡だらけ。昨夜は気付かなかったが、太股や足の甲にもくっきりと歯型が付いていた。
自分では確認できないが、きっと背中にも夥しい量の歯型が付いていることだろう。

ちらりと、隣で眠る自分の体を歯型だらけにした犯人を見る。
気持ち良さそうな寝顔を見ていたら、なんだか腹が立ってきた。



「……仕返し、ですよ」



がぶ、と剥き出しの首筋に噛み付いてみる。
彼が目が覚めて、鏡で自分の姿を見た時のことを想像すると少し笑えた。










僕は、彼のもの。





end.

次回予告に滾りまくって衝動的に書いてしまいました。
ばにたんの真っ白なやわはだにおじさんの歯形がいっぱい…萌
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