HERO TVが盛り上がり、ヒーロー業以外に、タレント業の仕事が増えてきた。
以前は僕だけだったタレント業も、最近では虎徹さんにもオファーが来るようになった。
仕事が増えるのは嬉しいことだが、必然的にふたりの時間が減ってしまう。
今日のようなふたり揃ってのオフは、最近では本当に貴重だ。
虎徹さんの匂いが充満する部屋で、虎徹さんのソファで、虎徹さんに甘やかされるのが至福の時。
他人に甘えることに慣れていない僕は、どれ位甘えていいのか限度が分からないが、虎徹さんは僕が甘えた分だけ甘やかしてくれる。


「ん……虎徹さん……」


猫のように虎徹さんの首元に擦り寄って甘えると、前髪に優しくキスを落としてくれる。
そこじゃ物足りない、とでも言うように上目遣いで瞳を見つめると、一番欲しかった場所に唇が触れた。


「ン……ふ、」


何度も何度も角度を変えて口付けられ、咥内に熱い舌が侵入してくる。
歯茎を擽られ、歯をねっとりと舐められると力が抜けてしまう。

虎徹さんは僕の歯を舐めるのが好きだ。
以前、何でそんなに執拗に歯を舐めるのか問いたところ、『バニーの歯がツルツルしてて気持ちいいから』と答えられた。
最初は歯を舐められるのが苦手だったが、最近ではその行為がとても心地よい。
彼によって心も体も作り変えられてゆくのが、悔しいけれどどこか嬉しかった。

虎徹さんの首に腕を回してぎゅっと抱きつくと、シャツの下から彼の手が侵入してきた。
ごつごつした指が腹筋を確かめるようになぞり、まだ柔らかいままの乳首を軽くさする。
まだ昼間だが、このままセックスに雪崩れ込むのも悪くない、なんてぼんやり思った。

―――そのとき。


けたたましい着信音が、甘い空間を引き裂いた。



「……………」

「……………」

「……………どうぞ」

「………ごめん…」


着信音は、どうやら虎徹さんの携帯電話から。僕は虎徹さんとふたりで居るときは電源を切っている。
虎徹さんは僕の上から退くと、ローテーブルに置いてある携帯電話を取り、部屋を出て行ってしまった。
しばらくすると、心底申し訳なさそうな顔をして戻ってきた。


「……今日娘のスケートの発表会があるの、すっかり忘れてて……」

「………はい」

「……その、ごめんな」

「いえ…構いませんよ。行ってあげて下さい。僕は毎日会えるけど、娘さんは滅多に会えないでしょう?」

「ん……悪い、夕飯はこっちで食べるから」

「……じゃあ、作って待ってますね」

「ん、ありがとな」


虎徹さんは僕の額に軽くキスすると、車のキーを掴んで行ってしまった。
傍に居て欲しいけれど、家族を大切にして欲しいのも本音。
僕のように、子供に寂しい思いをさせて欲しくないから。

時計を見ると、まだ正午を過ぎた辺りだった。虎徹さんが帰ってくるのに、あと6時間程は掛かるだろう。
この居心地の良い空間から帰る気も起きないし、家事でもして時間を潰そうか。

今日は天気が良いし、まず虎徹さんが溜めてしまっているであろう洗濯物を洗うことにした。
脱衣所の洗濯籠は、案の定衣服が溜まっていた。
靴下やら下着やらを洗濯機に入れ、次は彼がいつも着ている深緑のシャツ。
それを型崩れしないようにボタンを留めようと広げた時、ふわりといい匂いがした。
僕の大好きな、虎徹さんの体臭とコロンが混ざった匂い。

もう一度、今度は直接シャツに顔を埋めて思い切り匂いを吸い込んだ。
途端に肺を満たす、彼の匂い。安心感のある、けれどどこか官能的なその香りに頭がクラクラした。


「ん……こてつさん………」


シャツに顔を埋めたまま、それを抱きしめて脱衣所に座り込む。
目を閉じて吸い込むと、まるで彼に抱き締められているような錯覚を起こす。


「あ……だめ……、」


虎徹さんの香りが充満したこの狭い脱衣所で、正気で居られる筈もなく。
気付けば僕は、自分の下肢に手を伸ばしていた。


「ぁ…ん、こてつさ……こてつ、さん…っ」


邪魔なズボンも下着も取り払って、直接勃ちあがったペニスを扱く。
いつも虎徹さんがシてくれるように、竿を扱きながら先端を親指で押し潰す。
それを何度も繰り返していると、先端からは止め処なく先走りが溢れ、扱く度に厭らしい水音が響いた。


「あ、はァっ…ん、こて、つ、さぁんッ、ぁん、ぃっちゃ、うぅ、んッ」


シャツに顔を埋め、彼の匂いを感じながら絶頂に達した。
勢い良く出た僕の精液が深緑のシャツを白く汚し、コントラストが厭らしい。
一回達した筈なのにまだ物足りなくて、体の奥がきゅんと疼く。

彼をオカズにしている罪悪感よりも快楽が勝って、もう止まらない。

脱衣所の冷たいフローリングに寝転んで、自慰を再開する。
まだ一度も触れていない乳首が疼いて仕方なくて、傍に転がっていた洗濯バサミで挟んだ。
強く摘ままれる感覚と、無理矢理起たされる感覚が痛くて仕方ないのに、被虐に慣らされた体は悦んだ。

床にまで散っている白濁を指で掬い、ひくつくアナルに塗りたくる。
中指をゆっくりとナカに侵入させると、濡れた内壁がきゅうと指を締め付けてくる。
何回かピストンさせると、どんどん柔らかく解れてきた。


「は……ぁン、きもち、ぃ…あぁッ、ぁ、ん、」

狭い脱衣所に、自分のはしたない声が響く。

大分解れてきたので、一度指を引き抜き、今度は3本纏めて挿入した。
わざと前立腺には触れず、指が敏感な内壁を擦る感覚に酔い痴れる。虎徹さんがいつもシてくれることだ。ぐずぐずになるまで焦らされてからの絶頂が堪らなく気持ちいいことを、彼は教えてくれた。
片手でアナルを弄り、もう片方の手は乳首を挟んだ洗濯バサミをくりくりと弄ぶ。

同時に与えられる快感に、またイきそう、と思ったそのとき。
いきなり脱衣所の扉が開かれた。


「お、こんなところに居た…………ぇ、バニーちゃん?」

「こ、てつさん……?なん、で…」


夕方まで帰ってこないと思っていた虎徹さんが立っていた。

虎徹さんのシャツに顔を埋め、乳首には洗濯バサミ、アナルに指を挿入しているところを見られてしまった。
虎徹さんは僕の姿を頭から爪先まで視線を走らせると、手首を掴み、アナルから指を引き抜かせる。そして、僕の体液で濡れた指をぺろりと舐めた。


「娘の発表順が最初だったから早く帰ってこれたんだよ。……で、なにこれ?」

「ぁ、あ……っ」

「バニーちゃんってば、俺のシャツオカズにしてオナニーしてたの?」

「っ……だ、だって、だって…っ」

「だって……何?」

「だって……ぁ、やん…っ」


虎徹さんは意地悪っぽく笑うと、乳首を挟んだ洗濯バサミを強く引っ張った。
強い痛みを感じるのと同時に、ぱちん、と音を立てて洗濯バサミが乳首から外れる。
もう片方も同じようにされ、長時間洗濯バサミで挟まれていた乳首は真っ赤に腫れ上がっていた。
そこを舌で癒すように舐められると、泣きたくなるような快感が体中を駆け巡った。


「あぁッ…ん、ぁ…だって、ぇ、」

「うん?」

「お昼からッ…ずっと、えっち、したくてッ」

「…うん」

「こてつさんのシャツの匂い嗅いだらッ…我慢できなくな…ぁ、ああッ!」


言い終わらないうちに、自分で散々ほぐしたアナルに虎徹さんのペニスが入ってきた。
待ち望んだ熱と質量に、体中が悦ぶ。
彼の広い背中に腕を回してぎゅっと抱きつくと、より強い彼の香りに満たされた。


「あッはぁっぁん、こてつ、さぁんっ、んぁ、」



激しく揺さぶられ、フローリングの床に肩甲骨が擦れて痛い。
しかしそれよりも快楽が勝り、少しくらいの痛みも快感に変換される。
先程自分では触れなかった前立腺を容赦なく突かれ、射精感が募ってくる。
虎徹さんより先にイかないように腹筋に力を入れると、同時にアナルを締めてしまう。


「んッ……バニーちゃん、イきそ?」

「ふぁッあ、は、ぃッイき、そ…っぁ、あ、」

「イっていいぜ、さっきイけなかったもんな」


ペニスの先端で一番好いトコロをぐりぐり押し潰され、呆気なく絶頂に達した。
すぐに勃起したままの彼自身が引き抜かれると、虎徹さんは自らのペニスを手で扱き出す。
絶頂の余韻が抜けないまま、ぼんやりと彼の自慰を見つめていると、顔に温かい精液をかけられた。














「あの…シャツ、ごめんなさい」


激しいセックスの後、一緒にお風呂に入り、シャツを汚したことを詫びた。
虎徹さんは僕の濡れた髪を指で弄びながら、ああ、と気の抜けた返事を返してきた。


「別にいいけど…つーか、バニーちゃんが俺のシャツをオカズにしてたの、興奮したし」

「え…っぇえ、え…ッ」

「だってさ、可愛い恋人が自分のシャツの匂い嗅ぎながらオナニーしてるんだぜ?おじさん萌えちゃったわー」

「…………」

「おい、引くなよ」


ぽんぽん、と頭を撫でられながら苦笑された。
もちろん引いてなんかいないが、彼が自分の痴態に興奮してくれたのが嬉しかった。

直に感じる彼の体温と、ぬるま湯が火照った体に心地よい。
お風呂を出たら、ほったらかしにした洗濯物の続きをしなければ。



end.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -