今日は珍しく出動要請が無く、バニーは撮影、俺はインタビューと、平和な一日だった。
何事もなく雑誌のインタビューの仕事が終わり、久し振りに外で食事でもしないかとバニーに連絡したところ、もうすぐ撮影が終わるからスタジオで待ってて下さいとのこと。
せっかくだからバニーの撮影風景を見てやろうと撮影スタジオに入ると――そこには、全く想像もしなかった光景が広がっていた。

バニーだ。
バニーガールが居る。


それはいつもバニーという愛称で呼んでいる、俺の恋人。
露出度の高いバニーガールの衣装を身に纏い、ふわふわの蜜色の頭には薄いピンクのうさぎ耳のカチューシャ、小ぶりで上向きのお尻には丸い尻尾。
おまけに誰もが見惚れる美脚には網タイツ。
世界一色っぽいバニーガールが、そこに居た。


「バーナビーさん、そこの壁に手を付いてお尻を突き出して…そうそう!こっちに目線下さーい!見下す感じで!」

「こうですか…?」


オイオイ、人の恋人になんつー注文してくれてんだ。


挑発するように突き出したヒップラインに、可愛らしい作り物の丸い尻尾。
高めのピンヒールを履いているお陰でうっすら浮いた筋肉や滑らかな筋が強調され、色っぽいなんてモンじゃない。

あられもない恋人の姿を呆然と眺めていると、監督からカットの声が掛かる。
スタッフから手渡されたバスローブを羽織るバニーガールを見つめていると、ふと目が合った。


「虎徹さん!」

「お、おう」


俺の姿に気付いたらしいバニーが、こちらに小走りでやってきた。
ピンヒールをカツカツと鳴らして走ってきたと思うと――グキリ、と嫌な音を立てて、バニーがよろめいた。


「ッ!?」

「っ!バニー!」


慌てて駆け寄り、顔から転びそうになったバニーを前から抱き締めるような形で支える。
慣れない高いヒールで走った所為で、バランスが取れずに足を挫いてしまったらしい。


「お…おい、大丈夫か?」

「んっ……ちょっと…駄目、です」

「ったく、しょーがねーな」

「っ…すみませ……うわっ!?」


余程痛いのか、細い脚を震わせているバニーの膝裏に手を入れ、ひょいっと持ち上げた。
所謂お姫様抱っこ。スタッフがいる前でやられるのがよっぽど恥ずかしいのか、バニーは頬を真っ赤に染めた。


「ちょっ…虎徹さん!降ろして下さい!」

「は?お前降ろして自力で歩けんの?」

「っ……それ、は」

「じゃ、大人しくしてな。お疲れ様っしたー」


呆然とこちらを見つめるスタッフ達に一応挨拶をして、スタジオを後にした。
俺の腕の中の兎は、観念したのか大人しく抱かれている。
なんだかお姫様を攫う盗賊みたいだな、とヒーローらしからぬことを思った。











バニーの荷物を取ると、俺やバニーの家よりも医療道具が揃っているという理由で、トレーニングセンターに併設されている医務室に連れて行った。
もう勤務時間が過ぎていた為、医療関係の人間は退社してしまっていたが、応急処置くらいなら俺にもできる。


真っ白で清潔なベッドにバニーを降ろすと、網タイツに包まれたしなやかな脚をそっと持ち上げる。
怪我の具合を見ようとハイヒールを脱がそうとすると、バニーが痛そうに呻き声を上げた。


「、んぅっ……」

「わり、痛かったか?」

「ん…少し……」

「包帯する前に少し冷やした方がいいな…氷持ってくるから、足動かすなよ?」

「あ……こ、虎徹さん!」

「ん?」


振り返ると、顔を真っ赤にして、今にも泣きそうになっている兎ちゃんがいた。
その表情は痛くて泣いているというよりも、何かに怯えているようだった。


「どうした?」

「ご…ごめんなさい…その…デート…せっかく誘ってくれたのに…」

「ああ…そんなことか。いいよ、足治ったら行こう、な?」

「…はい……んっ、」


安心させるように頭を優しく撫で、唇に触れるだけのキスを落とした。
すぐに唇を離すと、バニーは頬をほんのり桃色に染め、目で俺の唇を追う。


「お前……そんな可愛い反応すんなよ…我慢できなくなんだろ?」

「…ぃ…いいですから……」

「は?」

「いいですからっ……我慢、しないで下さい」


そう言って、バニーはスラックスの上から俺の股間をするりと撫で上げた。
そのまま弱い力加減でするすると撫で、熱の籠った瞳で見上げてきた。
ベッドに座っている為必然的に上目遣いになるそのアングルに、ごくりと生唾を呑む。


「僕…虎徹さんがデートに誘ってくれた時からずっと…貴方に抱かれたかったんですよ…?」

「でも……っバニー、足、」

「虎徹さんが優しくしてくれたら…大丈夫ですから…」









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