おじさんと居るとおかしい。


2人で居るといつだって抱きしめて欲しくて。
いつだってキスして欲しくて。
いつだって愛の言葉を囁いて欲しくなる。

今だって、そう。

この感情を恋というのならば、僕は今恋をしているのだと思う。



「バニーちゃん、おいで」

「………っ、」



ああ、どうしてこの人は。
いつだって僕の言って欲しいことを言ってくれるんだろう?

シャンパングラスを置き、デスクチェアに腰掛けたおじさんの膝に跨る。
本来一人掛け用のデスクチェアがギシリと音を立てた。

もともと体格が同じ位な為、跨ると僕の方が少しだけおじさんより目線が高くなる。
こんなに至近距離でおじさんを見下ろすなんて初めてで、なんだか気恥ずかしい。
耐え切れなくて目を逸らすと、くすりと笑い声が聞こえた。



「緊張してる?」

「っ……し、してませんっ、そんなの」

「ふーん……じゃあさ、ん」

「……え」

「ちゅーしてよ、バニー?」



一瞬で顔が真っ赤になったのが、自分でも分かった。
なんでこんな恥ずかしいこと簡単に言えるんだろう、この人は。言われたこっちが恥ずかしい。

ああもう、どうにでもなれ!



「目…瞑って、ください」

「んー」


素直に目を瞑るおじさん。
少しだけカサついた唇に、そっと自分のそれを重ねた。
甘いシャンパンの匂いがふわりと香る。
どうか、緊張で震えているのが伝わりませんように。

一瞬だけ触れ合わせてすぐ離すと、満足顔のおじさんの手で頬を挟まれた。
いつも温かい大きな手が冷たく感じる。
それは自分の頬が熱いからかもしれない。



「…バニーちゃん顔真っ赤。」

「っ…う、うるさいっ」

「あはは、かわいーの。じゃ、お返しな」

「!んん………っ」


ゆっくりと顔を引き寄せられ、再び重なる唇。

反射的に腰を引こうとすると、片手で腰をぐっと抱き寄せられた。
何度も何度も角度を変えて口付けられ、酸素を求めて薄く開いた唇から熱い舌が侵入してくる。
舌を絡められ、歯列をなぞられ、酸欠と快感で頭が真っ白になる。
さすがに苦しくなって彼の厚い胸板を叩くと、やっと開放された。



「はっ…はあっ、は……」

「わり、大丈夫か?」

「はあっ…だめ…です……んっ」



だめ、って言ったのに。

顎を伝うどちらかも分からない唾液を舌で掬われたかと思うと、そのまま唇に吸い付かれた。



「ん、ふ……」



鼻にかかった甘い声が恥ずかしい。

ちゅ、と音を立てて離された唇。
なんだか名残惜しく、無意識におじさんの濡れた唇を目で追ってしまう。
それに気付いたおじさんは意地悪っぽく笑って、僕の体をぎゅっと抱きしめた。



「お前、可愛すぎ。今のは反則だろ」

「え………あ」

「もしかして、無意識?」

「………ん」


こくりと頷くと、また可愛い、と言われて頭を撫でられた。
こう可愛い可愛いと連呼されると、子ども扱いされている気がする。


「…もう、黙って下さい」


もう子ども扱いしないで下さい、という気持ちを込めて
今度は僕から大人のキスを。



恋心




end.
ちゅっちゅしすぎじゃぁああああ!!!!
イメージは9話の暗転前…ということで…
受けが攻めの膝に乗っかる構図めっちゃ好きです。
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