比嘉 | ナノ

My Destiny


夜の帳が降りた部屋には、カチコチという、時計が時間を刻む音だけが響く。
ゆるゆるとした微睡みから覚醒し、時計を見ると、深夜2時を回ったあたり。目の前には静かに寝息をたてて眠る永四郎がいた。絡められる足に、ガッチリとホールドするしなやかな腕。その全てが私を離すまいと引き寄せている。全身で私を愛してくれる永四郎に、愛しさが込み上げてきた。彼のもたらす、麻薬のような、極上の愛を知ってしまった私は、もうこの人なしで生きていくことはできないだろう。彼の滑からな頬にそっと手を這わせながら、そんな事を考える。

ねぇ、もし貴方が目の前から消えてしまったら、私はどうしたらいい?

20年以上生きてきて、世の中に永遠が無いことくらい、痛いほどに感じていた。後ろ向きな私は、この関係でさえ、終焉の時を考えてしまう。
世の中には素敵な人が沢山いて。永四郎がもっともっと好きになる人もいるんじゃないか。彼の優しく緩められた目が私以外の女性に向けられるのを想像すると、言葉にならない想いが、涙になって溢れてきた。
深夜に変なことを考えるべきで無いのは分かっているが、一旦考え出すと止まらない。
いつか、この永四郎への想いが、思い出になってしまうのだろうか?そうならない事を祈りながら、誓うようにそっと彼の唇にキスを落とす。彼の存在を確かめ、少しだけ満足して離れようとすると、力強く抱きしめられた。

「永四郎?ごめん、起こしちゃ…「いいから。」んっ。」

永四郎は、深く深く口付けながら、私の目元を優しく撫ぜる。ああ、まただ。永四郎は全部分かってやっている。永四郎のキスで、さっきまでの思考もぐちゃぐちゃに掻き回されてしまった。

「ねぇ、永四郎。私のこと、離さないでいてくれる?」
「当たり前でしょう。貴方が離れたいと言ったって、自由にさせるつもりはありませんよ。」

永四郎の、優しさに少しばかりの狂気を滲ませた目が、堪らなく好きだ。
触れるだけのキスを交わしながら、永四郎の手が、私の背筋を、ゆっくりと、凹凸を楽しむように撫で上げる。思わず息の上がる私に、永四郎はニヤリと笑った。

2人の夜が明けるのは、まだまだ先だ。



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