01

1時間目の後の休み時間、私は3-2の教室へ赴くと、廊下側の、後ろから2番目の席に座る幼なじみへ声をかけた。

「凛ちゃん、ヘアゴム持ってない?」
「ん?あるぜ。ちゃーした?」

机に顔を伏せていた幼なじみの凛ちゃんは、私の声を聞くとむっくりと起き上がった。

「今日慌ててたから、ビニールのゴムで結んじゃって。」

苦笑しながらそこまで言うと皆まで伝わったのか、凛ちゃんもしたり顔になる。

「あー。紫苑は髪の量多いからなー。切れたか。」
「そうなの。」
「よし、じゃあくま座れ。わんが括ってやる。」
「本当?ありがとう!」


凛ちゃんは昔から器用で、遊ぶ場所を制限されていた幼稚園の頃なんかは、よく私の髪を三つ編みにして遊んでいた。あの頃を思い出して、思わず笑みが零れる。

「へへ。何か懐かしいな。」
「うん。私も同じこと思い出してた。」

美容師かと思う程の手際の良さで、どんどんと自分の髪が纏められていくのが分かる。

「うり。完成さー!」

そう言って渡された鏡を覗き込むと、真ん中に太めの編み込みが施され、毛先が左サイドに流されたポニーテールが見えた。編み込みでまとめられている分スッキリとした印象を受ける。少し高い位置で纏めるだけの普段のポニーテールとは雲泥の差だ。

「すごい!スッキリしててきれい。ありがとう、凛ちゃん。」
「だろ?雑誌で見かけて、絶対紫苑に似合うと思ったばぁよ。」

――――キーンコーンカーンコーン

なんて、のんびり話していると、予鈴がなった。

「いけない、遅れちゃう。凛ちゃんほんとありがとう!」
「気にさんけー。またなー。」
「うん。」

ひらひらと手を振る凛ちゃんに別れを告げ、自分の教室へと向かった。


――――この一連の流れを見守るものが居たことを、私は知らない。



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