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「それでは、今月の委員会を終わります。」

日も傾き、西陽が容赦なく差し込む教室で、耳触りの良い、上質な天鵞絨のような声が響いた。

その号令を皮切りに、姿勢よく座っていた面々は、思い思いに教室を出ていった。静けさに包まれる教室に残ったのは、先程の声の主であり、我らが評定委員会委員長の木手永四郎くんと副委員長である私の2人だけ。
全員が教室を去ったのを確認すると、言葉を掛け合うでもなく、黙々と教室を片付け始める。木手くんとは3年間同じ委員を務めている為、お互いがどのように動けば効率的なのかは理解している。
ホワイトボードの文字を消し、机を元の状態に戻し終わったところで声を掛ける。

「今月も司会お疲れ様。」
「貴女の方も、お疲れ様です。資料作成、ありがとうございました。」
「いえいえ。こちらこそ、最終チェックありがとう。」
「直すところも無かったので楽なものでしたよ。」
「それなら良かった。」

3年に上がり委員長・副委員長になった私たちは、適材適所でいこうという話になり、委員会の司会・進行や先生とのやりとりを木手くんが、資料作成と議事録の整理を私がやるということでまとまった。

「来月の議題だけど、この4つで良いんだよね?」

議事録の項目を指さしながら確認をとる。

「ええ。」
「議事録の整理はほとんど終わってるし、今週中には議題もまとめ終わるだろうから、来週あたりにチェックお願いしてもいい?」
「大丈夫ですよ。」
「ありがとう。部活で忙しいのに、ごめんね。」
「いえいえ。貴女は仕事が早くて助かります。」

木手くんには人を動かすカリスマ性が備わっているのだろう。こういう、さらっとした一言でも人のやる気を引き出すのだから。


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