01

メッセージアプリを開いたまま、時計と睨めっこしながら、私は未だに迷っていた。
ほんとに送っていいの?迷惑じゃない?
昼間に相談した凛ちゃんには、

「送ってやれって。嫌な事じゃなくてめでたいことなんだしよ。永四郎も喜ぶはずさー。」

なんて言われて納得したものの、いざ送ろうとすると心配性が頭を擡げた。
私が悶々と悩んでいる間にも刻一刻と時間は過ぎ去り、部屋には働き者の秒針が時を刻む音ばかりが響く。時刻は23:59。
あと数回秒針が動けば日付が変わり11月9日…木手くんの誕生日だ。3…2…1…ええい、ままよ!私だって木手くんの誕生日1番にお祝いしたいの!
そんな気持ちで送信ボタンを押した。
トーク画面には、

お誕生日おめでとう!
これからもよろしくね。
木手くんにとって素敵な1年になりますように。
夜遅くにごめんね。おやすみなさい。

という文面が無事に表示されている。時刻表示も0:00。…やった…送っちゃった…いやでも既読ついてるし、読んでくれたって事だよね?ちょっとでも気持ちが伝わればいいなぁ。
そんな事を思いながら一息ついていると、着信音が鳴り響いた。思いがけないことに思わず肩を震わせ画面を確認すると、木手くんの文字。
え、ちょっと待って?!なんで、え、ちょっと!!なんてプチパニックを起こしながらも取り敢えず通話ボタンを押す。

「も、もしもし…」
「あぁ、夜中にすみません。眠ってましたか?」
「ううん、まだ起きてたから大丈夫だよ!寧ろ木手くんの方こそ寝てなかった?」
「よかった。俺も起きていたので気にしないでください。先程はメッセージありがとうございました。」

恐る恐るでると、ほっとしたような木手くんの声が聞こえた。私も気になっていたことをきくと、どうやら迷惑ではなかったようで胸を撫で下ろす。

「いえいえ。大したことも書けなかったけど。改めて、お誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。あなたからも祝って貰えると思ってなかったので、嬉しくてつい電話してしまいました。突然すみません。」

”嬉しくて”―その言葉を聞いて、悩んだ末に送ってよかったと確信する。背中を押してくれた凛ちゃんありがとう。嬉しくて、自然と声のトーンが上がる。

「そんなに喜んで貰えるなんて。あやまらないで?私も直接お祝いが言えて嬉しかったから。これからもよろしくね。」
「そう言って頂けると有難い。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「うん。じゃあ、夜も遅いし、また明日。」
「ええ、では。ゆくいみそーれ(おやすみ)。」
「ゆくいみそーれ(おやすみ)。」

その夜は包み込むような優しさで言われたゆくいみそーれの言葉が頭から離れず暫く眠れなかった。来年もお祝い出来たらいいなぁ。




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