深く絡ませていた舌をぢゅ、と音を立てて吸ってやると彼の喉奥から気持ち良さそうな声が漏れる。
薄く眼を開いてみれば声音と同様に気持ち良くて仕方がない、と言っているかのようにキスに溺れる顔。
自分がそんな顔をさせているのだと思うと、ぞくぞくする。
衝動のままに摩擦で紅くなった彼の下唇を甘噛む。
うっすらと開いた柘榴の双眸に映る俺の顔は、目の前の彼と同じ位興奮しきったそれだった。
「旦那」
首筋に吸いつくと、ひくりと小さく震えるのが楽しくて何度も繰り返す。
「…いいですかィ?」
もう互いに戻れない所まで来ているのを承知していながら、わざと聞く。
あわよくば、その声で俺に抱かれる事を望んでほしい。
「俺がヤダって言ったら我慢出来んの?」
そう言いながらくつりと笑う顔は、それはもう妖艶で。
「さぁ?それはその時になってみねーと」
判りやせんね、と微笑み返しながらするすると彼の着衣を崩していく。
こんなにも美味そうな彼を前に、我慢なんてやはり出来る筈もなく。
相手もそうなのか、俺が彼の服を一枚、また一枚と剥くのと同じように俺の服を剥がしていく。
ぱさり、ばさりと服が投げ捨てられていく音にすら興奮して乾き始めた唇をベロリと舐めて潤す。
「…物欲しげな顔してら」
「そりゃあお互い様ってヤツですぜ?」
くくっ、と顔を見合わせて笑い、喰らい合う様に再び唇を重ねた。
「っふ、う、んん」
まるでアイスキャンディーを舐めるかのように、下から上へと裏筋をゆっくり舐め上げてやると彼の口から吐息のような喘ぎが漏れる。
「声、我慢しねーで下せぇよ」
「は、そっこでしゃべん、なっ」
俺の吐く息さえ刺激になるのか、口元を自らの手の甲で隠しながらこちらを睨みつけてくる眼が堪らない。
ゆらゆらと理性と本能の間で揺らめくその眼に映っているのが俺であるという事実に、腹の底から得も言われぬ感情が吹き上げてくるかのようだ。
もっと、俺の手でぐしゃぐしゃにその顔を乱してやりたい。
身も世もなく喘がせて、息も絶え絶えにしてやりたい。
そんな暴力的な欲求そのままに先端をいたぶれば、欲が零れて彼の腹に散る。
「ああっ」
「気持ち良さそうな顔」
でも、まだ足りない。
彼の欲を絡ませた指で菊座を撫でると、待ち望んでいたかのように吸い込まれ、その熱くて狭い中の感触にほくそ笑む。
2本、3本と数を増やすにつれ、濡れた音が辺りに響く。
「ここ、もうグチャグチャですねぇ」
「く、んんっ、は、沖」
指を激しく出し入れして見せれば、そこは縋るように絡みつく。
先程まで僅かに理性の残っていた彼の眼も、とろりと溶け始めた飴玉みたいに揺らめいていて、その様子にごくりと生唾を飲む。
「…ねえ、旦那。もっと気持ちよくなりたい?」
「んっ、なり、たい」
「じゃあ、言って。俺が欲しいって」
指を抜き去りいきり立つ自身をひたりと蕾に当てながら、そうしたら、もっともっときもちよくしてやりますぜ、と囁く。
「あ、ほ、しい」
おまえが、欲しい――
ああ、どうやら俺は自分で思っていたよりずっと欲深らしい。
まだ足りない、なんて。
欲しい欲しい、あなたが欲しい