そよそよと春風が柔らかく頬を撫でる。

思わず誰もが眠気を誘われそうな気持ちの良いそれに、沖田の口からも大きな欠伸が漏れる。

これからどう暇をつぶそうか。と考え歩いていると、

視界の先に見知った銀色が土手の緑に紛れて風にそよいでいるのが見えた。


「旦那?」


思わずひょいとそちらを覗き込むと、思った通りの人物が平和な寝顔をさらしていた。


「…間抜け面」


そのあまりの呑気な顔にたまらずくくっ、と笑い、その横に座り込んで空を仰ぐ。

木陰から差し込むちょうど良い日差しと、時折吹く心地よい風。なるほど、ここは実にいい昼寝場所だ。

自分も昼寝の穴場を見つけるのは得意な方だと思っているが、目の前の人物には敵わない。

まるで猫の様に、心地よく過ごせる場所を探すのが得意な人で、

そんな気紛れで自由な相手に沖田は惚れたのだ。

最初は自分の周りにいないような相手だから、やたらと気になるのだとそう思っていた。

だが、ある日を境に自分の抱える気持ちが単なる気の置けない相手に持つものではないのだと気付いてしまった。

自覚したその日から今日まで。何度となく沖田は銀時に想いを告げたが、

暖簾に腕押し、糠に釘、といった態でいつもいつものらりくらりとかわされてしまう。


「そろそろ落ちちゃあくれやせんかねェ」


言葉に反し、その声音には焦りなど少しも含まれていない。

それどころか、それはもう楽しくて仕方ないと言わんばかりの声音で。

もしも銀時が今の様子を見ていたら、まるで諦めるつもりがないその様子に

眉をしかめて居ただろうが、生憎と本人は暢気に夢の中。






寝顔を眺めながら楽しげな笑みを浮かべる沖田の傍で、

四葉のクローバーがその想いを代弁するかのようにふわりと風に揺れた。








「わたしのものになって」





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