ひらひらと夜空を舞い落ちる桜を眺めながら歩く。
その足取りは散々飲んだおかげで千鳥足も良いところ。もしも素面の誰かが銀時のその姿を見ていれば、いつひっくり返るのかとハラハラするような足取りだ。
そんな事など露知らず、小さく鼻歌などを歌いながら夜桜を堪能する。
まるで泣くように落ちる花弁は街灯に照らされて時折白く光る。
(きらきらきらきら、星みてぇーだなぁ)
酒に酔ったふわふわした思考でそう考える。
今夜はとても良い日だ。
酒は美味かったし、桜は綺麗だし、気分も悪くない。全てが心地よい塩梅で銀時を満たしている。
でもどうせなら。
「あー会いてぇなー」
さわさわと心地よい春の夜風が頬を撫ぜる。
どうせなら、隣にアイツがいたら。
などと思ってしまう自分に薄く笑う。
「なーんて」
「何が、なーんて。なんですかィ?」
突然かけられた声にびくりと震える。
驚いて振り向けばまさしく会いたいと口走ったその相手、沖田が立っていた。
あまりのタイミングの良さに銀時はぽかんとしてしまう。
「…実はテレパシーとか使えたりする?」
「はぁ?」
「あーいや、何でもね」
手を大きく振って何でもない、と誤魔化す。
沖田はそれを怪訝そうに眺めていたが、ひらり、と視界に舞い込んできた桜を見て視線を上げる。
それに釣られて、銀時も再び舞い散る桜に視線を戻す。
「良い夜ですねィ」
ぼんやりと二人で夜空に舞う花吹雪を眺める。
ただそれだけの事だけれど、そのただそれだけが銀時の気持ちを満たしていく。
「…ああ、良い夜だ」
ひらり、想いよ届け