狭い部屋の中、薄明かりに照らされて蠢く人影が二つ。

忙しない吐息が響き、擦れるようなそれが部屋の空気を揺らしていた。




ふるふると小さく震える拳を握りしめながら、銀時は快感を紛らわすように壁に頭を擦りつけ、

せめてあられもない声など上げぬようにと、唇を強く噛む。

そんな恋人の仕草を不満に思ったのか、銀時の背後にピッタリと寄り添いながら悪戯を繰り返している沖田が囁く。


「旦那ァ…我慢しねぇで声、出して下せェよ」

「…や、なこった、」

「強情だなァ、こーんな恰好して俺の事を誘ったのはアンタじゃねーですか…」

「っ、そ、れはっ」

「俺がして欲しいって言ったから、ですよねィ」

「んんっ」


目の前に晒されている白い項に強く吸いつきながら、沖田はうっとりとした声音で囁く。

普段の彼の平坦なものとは違い、今は熱に浮かされているそれに銀時はまた身を震わせる。

立ったまま壁に縋るように両腕を付き、薄桃フリフリの可愛らしいエプロンだけを身に纏ったその姿の銀時は、

沖田が想像していたものよりも遥かに愛らしく、そしてとんでもなく、いやらしかった。


「旦那、アンタすっげー可愛い…」


コリコリと薄布の上からつんと主張する胸の突起を弄ぶ。

その度に、小さな喘ぎを口の中で噛み殺しながら跳ねる身体がいとおしい。

ちゅ、とむき出しの肩に軽く口付けながら、すっかり勃ちあがった彼のそれに手を伸ばすと、エプロンの上から強く握り、揉みしだく。

その衝撃に銀時は息を飲み、今度はひきつれた声を上げたが、まだまだ沖田の望む程の乱れではなく、執拗に責め立てたくなる。

泣いて啼いて、身も世もないほどに乱れる彼が見たくて、沖田の愛撫はいつもゆっくりと、毒を沁み込ませるかのように粘着質だ。

対して銀時はそんな年下の恋人の手練手管に流されまいと、ギリギリまで理性を手放さない。

しかし、今回はいつもと異なる――いわゆるコスチュームプレイなどという――状況に銀時の理性は早くもグラグラと揺れ始めている。


「も、イッちゃいそ…」

「いつもより早いんじゃねーですかィ?…良いですよ、イっちまいなせェ」

「あぁあ!」


布越しに擦られ続け、止めとばかりに亀頭を強く抉られ、たまらず吐精してしまう。

達した快感に震え続ける銀時に微笑みながら、精液でべたべたになった指をひっそりと息づく彼の菊座に押しつける。

そこは既に次を待ちわびて開閉を繰り返しており、その事にまた沖田はほくそ笑むと、

意地悪く奥深くまでは入れず、浅く出し入れを繰り返す。


「あ、あ、な、んで」


中途半端な動きの指に、銀時の中が疼く。

もっと深く、奥深くまで、かき回してほしいと思う。

既に何度もこの恋人に抱かれた身体は正直で、もっともっと、と快楽を求める。


「…自分で腰揺らして、旦那ってばやらしー」

「っ、てめーがっ中途、半端なこと、するか、ら」


恨み事を言いながら、腰をくねらせて言外にねだる恋人にますます沖田の笑みは深くなる。


「そいつァ失礼しやした。旦那は酷くされるのがお好きですもんねィ」

「っあ、痛ぁ!て、め、いきなり…!ぁ、あ」


ならばと誘う蕾を乱暴に指で広げた沖田は、そのままその骨ばった指を遠慮なく複数潜り込ませる。

内部に入り込んだ指を深く差し込み、バラバラと腸壁を引っ掻き廻す。

それが堪らないのか突き出した尻を揺らしながら、内部は更に奥深くをと望み、沖田の指を誘いこむ。

ぐりぐりと銀時が好きな場所を集中的に嬲りながら、そんないやらしい恋人の媚態に、自らも浅くなる呼吸を隠しもせず耳元に囁きかける。


「…アンタ、いつもより興奮してるんじゃ、ねーですかィ?ほら、もうここトロトロですぜ」

「は、あ!ん、んぁ!お、きたぁ、も、」

「もう、なんですかィ?ちゃんと、言って下せェよ」

「っかってる、癖にっ」

「言って、旦那。そしたらアンタが欲しいように、差し上げまさァ…」

「…っ、う、ぁ…入れてぇ、お前のっ欲し…」

「っ!」

「ぁああ!」










散々に睦み合い、ぐったりとした倦怠感が部屋を漂う。

あの後、タガが外れたように求め合い、何度も交わった。

終わりの見えないようにも思えたそれも、幾度目かの絶頂でついに銀時が気を失ったことで漸く止まることが出来たのだった。

今は後始末も終え、先ほどまでの隠微な雰囲気など何処かへと行ってしまったかのような空気が二人を包んでいる。


「ったく、どーすんだよ、このエプロン…」

「洗って使えばいいじゃねーですか?」

「使えるか!」

「…今日の事、思い出しちまって料理どこじゃなくなっちまいやす?」

「っ」

「あらら、旦那、図星ですかィ?やーらしいなァ」

「このっ!」

「いで!」

「自業自得だ、この馬鹿!」

「えぇー俺だけのせいですかィ?旦那も結構ノリノリだったじゃねーですか」

「てめーもうしゃべんな!」


好き勝手に喚きあう二人の会話は色気など何処へやらだが。

狭い部屋の中、薄明かりに照らされて、寄り添う影が二つ。

じゃれあう様に、そこにあった。








(あなたに)(きみに)、狂う





<11.10.29>



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