「やっぱこれがケーキの代名詞だよなー」
「そうですねェ」
目の前に運ばれてきた、苺のショートケーキを前に上機嫌に旦那が笑う。
本当に甘味を前にすると子どもみてぇな表情をするお人だ。
そんな旦那を眺めながら、俺の顔も知らず知らずのうちに緩んでしまう。
この人といっしょに居ると、どうにも調子が狂う。
ふいに沸き起こる感情の嵐に呑まれてしまうような感覚。
振り回されて、落ち着いたかと思えばまた振り回されて。
それでもそれが目の前のこの人に起因することならば、許せてしまう、のはやっぱり俺がこの感情に溺れているせいなんだろうか。
「いやーいっつも悪いね、今なら銀さんなんでもおねだりきいちゃうよ!」
「マジですかィ。それなら土方の闇打ち手伝ってくだせェ」
「犯罪はちょっと…」
「冗談でさァ」
「オメーが言うと、冗談に全く聞こえないんだっつーの」
俺の軽口に、ケーキを頬張りながら旦那が文句を言う。
そんなやり取りも楽しくて仕方がなくて、思わず笑ってしまう。
「本当にアンタといると飽きないでさァ」
「そーか?君くらいなもんだよ、こんなオッサン構い倒す奴なんてよぉ」
「構い倒されてる自覚はあるんですねェ?」
「…まあ、少しは」
自分で言ったセリフに照れて視線をウロウロと彷徨わせる旦那が可愛くて、また笑いを誘う。
「ったく、たのしそーだな、オメーは」
「そうですねェ、楽しくて仕方ねーでさァ」
拗ねたような表情で呟いた旦那に、目を細めて答える。
アンタと一緒に居る時間は楽しくて、いとしくて。
アンタが甘味を手放せねえように、きっと俺もアンタを手放すことなんて出来ねーんだろうな、なんて、幸せに蕩けた頭で考えるのだ。
蕩けた頭で考える
<11.9.6>
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