※いわゆるヤンデレです、苦手な方は退避してください。











ギッ、ギチッと金属が激しく擦れる音が血と性の臭いに塗れた狭い部屋に響く。

両手首を拘束するそれは月明かりに鈍く光り、外れる気配もない。


「ああ、いけませんぜ」


闇に響く、声。

暗闇から伸びてきた白い手が、暴れたために傷付いた俺の手首に触れる。


「アンタに傷を付けていいのは、俺だけ、でしょう?」

「…っ」


ガリ、と手枷が付けた傷を沖田の爪が抉り、新たな傷を作る。

血が滲むそれをいとおしそうに眺めながら、目の前に立つ恋人はうっとりと微笑う。


「アンタは俺のモンなんですから」


いつの頃からか。

沖田は俺が傷を作ることを極端に嫌うようになった。

厄介事で作る怪我も、それこそ日常で作る小さなかすり傷でさえも。

そうしてやがて俺が傷を負う度、俺の肌に残る<自分以外の痕跡>を自らの手で上書きする行為を繰り返すようになった。


「愛してます、銀時さん」


手枷で繋ぎ、己の所有物たる証を身体中に刻み込んだ俺にすがるように愛を囁く、そんな姿をこの上なくいとしいと思う。

真っ直ぐだったその愛情を、執着で雁字搦めに縛り付けて、俺だけに向ける。

かつては周囲に向けられていたそれら全て、今では俺のためだけのものだ。


やがていつかは、


俺の事だけを考え、

俺の事だけを愛し、

俺の事だけを憎み、

俺の事だけを見て、

俺にだけ触れるような。


俺無しでは息も出来ないくらい、俺のものになれば良い。


俺も同じように彼の事だけを考え、

彼の事だけを愛し、

彼の事だけを憎み、

彼だけを見て、

彼だけに触れる。


狂い狂わせ、お互いがお互いだけの所有者となるのだ。


他の邪魔なものはなんにも要らない、二人だけで生き、やがてお互いを殺しあおう。

これ以上の愛情のかたちはないんじゃないか?



縋りついてくる彼にそっと身を寄せながら、俺はいつか来る終わりの瞬間を想い、愉悦に浸る。

「…俺もきみがだいすきだよ」


ありったけの感情を込めて囁けば、廻された腕に力が込められるのが判る。

ああ、こんな最低な俺に捕まるなど、なんて愚かで可哀想な…愛しい子なんだろう。




ねえ。


はやくはやく


きみがここまで堕ちてくるのをまっているよ。

<11.3.29>

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