※いつも以上に頭の悪い内容です



はむ、柔らかい皮に包まれたそれに愛おしそうに吸いついて。

中身を取り零すまいと慎重にちゅう、と音を立てる。

って、シュークリーム食うだけなのになんだってアンタそんなにエロいんですかィ。


「おきたくん?」

「…なんですかィ」


ああ、だから口をべたべたにしたままこっち見ねーでくだせェ。

唇にこびりついた油がなんだかとってもいかがわしいものに見えて、目のやり場に非常に困る。

年頃の少年らしく想い人のそんな行動に内心悶々とするが、表面上は常のしらっとした顔を崩さない。

折角、万事屋で彼と二人きりなのだ。

いつもは従業員の子どもたちがまるで沖田を威嚇するように彼の側を離れないことを考えれば、こんな状況はそうそうあるもんじゃない。

しかしいくら想い合っている同士とはいえ、真昼間から。しかも、いつ子どもたちが帰ってくるとも知れない状況で事に及ぶことは恐らくどころか確実に許してもらえないだろう。


「いや、食わないの?」

「頂きやすよ」

「なんだ、食わねーならもらおうと思ったのに」


残念、と微笑って旦那は手元のシュークリーム攻略に情熱を傾け直す。

これ以上それを見続けるのは自分にとって大変よろしくない事態を招きそうであったので、同じものをコンビニ袋からひとつ取り出して乱暴に噛みついた。

齧り付いたそれは大ぶりの皮にたっぷりのクリームが入っており、控え目な甘さで美味い。

しかし、一瞬でもやらしく思えたらなかなか切り替えが出来ないのも思春期の辛いところで。


(あーもう、こんちきしょうめ!)


腹いせにもう一度、大胆に噛みついたのが良く無かった。


「あ」


とろり、と偏ったクリームが皮を掴んでいた親指に垂れる。

あーやっちまった、と思いつつも躊躇いなく指を口に含む。

ぺろりと指についたそれを舐めとり、視線を上げると旦那がぼんやりとした表情でこちらを見ていた。

それは首を傾げる暇もないくらい一瞬のことで、すぐに常のやる気の無い表情を取り戻した相手はそういえば、と口を開く。


「山ほど甘いの食べたから喉乾いたな。沖田くんお茶いる?」

「え、ああ、はい」


徐に立ち上がり台所へ向かう背中に頂きますと頷くと、いつものけだるい調子で、おー、と返される。

がしゃん、とヤカンを火にかける音を聞きながら、頭の隅をよぎるのはなんだって今は昼間なんでェ。という自分勝手な空しさ。

夜だったらなんやかんやあの人を言いくるめて、欲望のままに突き進めたかも知れないというのに。


(…って、全く俺も菓子ひとつで情けねェなぁ)


己の未熟さにため息を吐きながら今度から訪問の際の手土産はクリーム系以外にしよう、と心に決めた沖田だった。

<11.3.4>

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