そうやって、泣きながら睨みつけてくる眼とか。

気持ちよさそうな顔をしながら悪態をつくところとか。

そういう事をされたら、もっと突き崩したくて堪らなくなるのに。




「旦那ァ…」

「っは…ぁ、…っ」

「アンタSの癖に、Sが喜ぶような顔しちゃあいけませんぜ」


繋がったまま、小刻みにその身体を揺らしながらそう囁く。

この恋人はぐちゃぐちゃになった顔で、それでも年上の矜持を保とうとするかのように理性をなかなか手放さない。

だから、俺は毎度躍起になってこの人を追い詰める。


「んなの…っしてねー…」

「そういう…顔が…」

「っぁ!」

「いけねーっつてんです、よ」

「あ…も、もぉ、…や…!」

「泣き顔が堪んねェ」

「…く、そがきっ!」

「ははっ…いい顔…!」


ぎしぎしと、疲労した筋肉や骨が軋む音が聞こえそうなくらいに激しく追い詰める。

吐く息は熱く、額に浮いた汗に前髪が張り付いて煩わしい。

目の前の人の全部を、この眼に焼き付けたくて、知りたいのに。

情動を耐えるように閉じられた瞼の奥で、今なにを考えているのか、とか。

視界を遮るこの髪のように、そんな全部を力任せに払いのけてしまえたらと強く思う。


「ま、マジで、も…ぉ」

「イきたい?」


抱え込んだ両足が痙攣しだす。

相手の限界を悟りながら、それでも俺を欲しがる姿が見たくて問いかける。

がくがくと身体を震わせながら、必死に頷く旦那が可愛らしい。

この人が、俺の事しか考えられないくらい、滅茶苦茶に出来たらどんなに良いだろう。

どろどろに溶かして、跡形もなくなるくらいにぐちゃぐちゃに、出来たら。


「あ、あ、もうとけち…まう」

「…溶けちまいなせぇよ」


溶けてしまえば良い。

そうしたら、俺がアンタを一滴残らず、余すところなく、手に入れられるはずだから。

きっと、どの甘露より、アンタは甘いのだろうから。





そうしてやっとあなたをてにいれる


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