突然だが、1月10日はおれの誕生日だ。べつに生まれた日に特別な意味なんてねェと思ってるし、ひとつ歳を取るからといって大騒ぎするような年齢でもねェがな。まぁでも、今日1月10日はこのおれ、ユースタス・"キャプテン"キッドの生まれた日ってことには変わりねェ。なぁ?そうだろ、キラー。
「違いない」
「まぁべつに興味はねェけどよ」
「ああ」
「……そういや、今日の晩メシは……」
「いや、いつもと同じだろう?たしか木曜日はカレーだったか…」
「……まぁ、カレー好きだけどよ」
「そうだな」
「……」
おいおかしいだろ、おい。もっと気の利くヤツだと思っていたが、キラーも少し抜けてやがるな。それか、あれか?食後のケーキに予算使いすぎて、晩メシは質素にってやつか?そうだな、たしかにこの間ビッグ・マムの傘下のヤツらとやりあった時に、少しばかり船も痛めちまった。その修繕にも金はかかる。まぁいい、晩メシくらいでガタガタ言うような器の小せェ男が海賊王なんざ、笑わせるってもんだ。
「ああそうだ。そういえばナマエが探していたぞ、キッド」
「あ? そういやあいつ、昨日から見てねェな」
なんだなんだ、もしかしてあれか?こっそり今日の準備でもしてたのか。普段は生意気な口ききやがるが、あいつもなかなか可愛いとこがあるじゃねェか。まぁ誕生日の主役がわざわざ出向くこともねェし、ナマエが探してるっつーんならそのうちここにやって来るだろ。酒でも飲んで待っててやるか。仕方ねェ。
「あっお頭ー! こんなところに居たんですか!」
「……噂をすれば、だな」
「おお、なんだナマエ。おれのこと探してたっつーのはよォ」
キラーの言う通り、噂をすれば何とやらだ。バタバタと騒々しい足音を立てて、ナマエがこちらへと駆けてくる。まぁ用なんて分かりきってるが、そこはあれだ。あえて気付かないフリをしてやるのも、未来の海賊王ってやつだろ。そう思って、ラムの入った瓶を呷りながらナマエの出方を窺っていると。
「キッドのお頭って、二年前あの七武海のトラファルガー・ローと一緒に、ルーキーなんて呼ばれてたじゃないですかー」
「あ゙? ああ、まぁな……」
「実は今度、世界政府公認で七武海メンバーのフィギュアが発売されるんですよねぇー」
「……お、おう」
「それで昨日から予約開始になったんですけど、なかなか予約用の電伝虫が繋がらなくてですねー…」
「……」
「海賊同期のよしみってことで、口利いてもらえませんかね!?」
お願いします!と土下座する勢いで頼み込んでくるナマエを前に、おれはしばらく言葉を発することが出来なかった。最後にもう一度だけ言うが、今日はおれの23回目の誕生日だ。
HAPPY BIRTHDAY!KID★そして、その日の夕飯はやっぱりカレーだった。カレーだけだった。ケーキは、無かった。
2013.1.10