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ハルピュイア


「同じ穴のムジナ同士、よろしく頼むぜ。シュロロロロ……!」



独特の笑い声を上げながら、シーザー・クラウンが去った研究所の一室。愛刀を傍らに置いたままソファへ身体を預けるローに、モネと呼ばれたロングヘアの女がゆっくりと近づいた。



「ねえ、医者のあなたがなぜ海賊になんてなったの?」

「何が言いてェ」

「しかも政府の狗なんて言われてる、七武海入り……ふふ」

「互いにつまらねェ詮索はなしだと言ったはずだ」

「ええ、そうだったわね」



手に持った羽根ペンをくるくると回しながら、女は含み笑いを浮かべる。スラリと伸びた長い手足を惜しげもなく晒す丈の短いキャミワンピースは、女性らしいメリハリのあるボディラインを引き立てていた。



「純粋に興味があるのよ、あなたに」



そう言ってモネが笑みを深めると同時に、離れていた二人の距離が少しずつ縮まっていく。2メートル、1メートル、50センチ――そしてついには両脚を組んだローの膝頭へ、マニキュアを塗った細い指先が這う。



「……ハッ、どうだかな」



ソファへ深く腰掛けたまま冷ややかな視線を浴びせてくるローに怯むでもなく、モネは片足をソファへ乗せるとゆっくりと体重をかけた。ロングコート越しに太腿を撫でる仕草は娼婦さながらで。知らずローの唇も、三日月のように弧を描いていく。



「ねえ、わたしに空を飛ぶ鳥の羽を与えてくれない?外科医さん」

「代価は?」

「そうね……わたしの身体、好きにして構わないわ」

「ならこの手足は貰うぞ」

「ふふ、どうぞ? 何なら手足とファックでもする?」

「フン、下品な女だ」

「死の外科医っていうくらいだから、そういう趣味でもあるのかと思って」



くすくすと笑い声を上げながら膝の上に乗り上げたモネが、ローの頬へ手のひらを滑らせる。目深にかぶったまだら模様の帽子を奪うと、まっすぐ視線を絡めたまま唇を深く重ねた。



「交渉成立ね」

「人面鳥……いや、ハーピーか。面白ェ」

「わたし、欲しいものはどんなことをしてでも手に入れたいの」

「名前通り、強欲な女だ」

「ほら、やっぱりわたしにぴったりじゃない」



無邪気に笑ったモネの細腰を引き寄せ、ローはニヤリと口端を持ち上げて見せた。必要な調べものが終わるまでの間、いい息抜きにはなるかもしれない――そう思って。





2012.5.15



ハーピー(=ハルピュイア)…ギリシア神話に登場する顔から胸までが人間の女で、鳥の翼と下半身を持つ貪欲な怪物。強欲な人・性悪女という意味もある。

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