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わたしが煙草になったげる


大して広くはないけれど、かと言って一人寝じゃ持て余しちゃうこのベッド。冷たいシーツが人肌で温もることは、あまりない。だって――



「……びっくりした、まだ起きてたの? ナマエちゃん」

「おかえり、サンジくん」



ほらね。やっぱり今日もサンジくんは、空が白み始める頃にやっと仕事を終えて帰って来た。



「待ってなくてもいいって言っただろ?……夜更かしはお肌に悪いですよ? レディ」

「ふふ、言うと思った。でもね、サンジくんがいないと寝られないの」

「!……ナマエ、ちゃん」



参ったな、と困ったように笑うサンジくん。ガリガリと後頭部を掻きながら、どこか居心地悪そうに立ち尽くす姿に、笑いが込み上げてくる。


それは――こんな表情にわたしがさせているんだ、なんて優越感。わたしを気遣うサンジくんの、紳士然とした余裕さえも……全部奪ってしまいたいから。そんな一心で、二人の距離を限りなくゼロに近付けていく。

鼻先を掠める煙草の匂いを大きく吸い込んで、サラサラの髪の毛に指を絡めた。そのまま少しだけ背伸びして、触れるだけのキス。



「おめでとう」

「……へ?」

「もう、なんて顔してるの。サンジくんの誕生日、でしょ?」

「……あー…そう言えば……」

「わたしの誕生日や記念日はちゃんと覚えてるくせに、へんなの」



くすくす笑いながら両腕を引っ張って、二人ベッドへ腰掛ける。笑い止まないわたしから目を逸らし、そりゃナマエちゃんは特別だからさ!なんて言い張るけれど。

落ち着きを失くした指先が、ポケットから取り出した煙草を忙しなく弄る。



「……ダメ、今日は煙草禁止」



ライターを握る右手に自分の両手を重ね、そう言えば。目を丸くさせたサンジくんと、絡む視線。



「口寂しかったら、キスしてあげるから……朝までずっとこうしてよう?」



ぎゅっと強く抱きついて、耳元で囁いた。



「……仰せのままに」

「ふふ、よろしい」




わたしが煙草になったげる




HAPPY BIRTHDAY!SANJI★
2011.3.2


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