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朝を口に含んで


「ロー起きて、朝だよ」


深く沈み込んだ意識を浮上させるのは、耳に馴染む聞き慣れた女の声。鈴の音のような心地よい高さのそれに耳を澄ますと、クスクスと小さく笑うのが聞こえた。


「ふふ、寝癖ついてる」


そう言っておれの頭を撫でつける細い指の感触を微かに感じながら、そっと閉じていた瞼を持ち上げた。


「おはよう」
「……あァ」


寝起きで掠れたおれの声にまたひとつクスリと笑みを零しながら、ベッドサイドに置かれた鏡の前で髪の毛に櫛を通す女。その柔らかく笑む口元に朝日が差し込んできて、薄桃色の唇を浮き上がらせている。

おれは身体を起こすと、何かに導かれるように乾いた唇を薄桃色のそれに重ねた。朝日をも飲み込んでしまうように、深く深く。




2010.7.31
title / にやり


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