SSS | ナノ
愛、知ってる。


「ねぇロー、あと少しで今年が終わっちゃうよ」


星空の下でカウントダウンを始めたクルーたちの喧噪の中であっても、コイツの声は心地よくおれの鼓膜に響く。ほら一緒にカウントダウンしようよ、と腕を引っ張ってくる細っこい手。返事を返さぬままグイと引き寄せれば、その小さな身体はあっさりこの身に預けられた。


「なぁに? どうしたの?」


けらけらと笑いながら見上げてくる瞳は、きっとこれからおれがしようとしていることを分かっているんだろう。少しだけ期待に染まった頬に手を滑らせて、その柔らかな感触を確かめる。親指でゆっくりと唇を撫ぜれば、それが合図のように伏せられた睫毛。何故だかむくむくと悪戯心が湧き上がってきて、無防備に晒された瞼の薄い皮膚にそっと口づけてやった。


「あいしてる」


そして唇を触れさせたまま紡いだ――普段は決して伝えることのない言葉は、コイツの頬を熟れた林檎のように真っ赤に染め上げて。まんまと悪戯が成功した悪ガキみたいに、声を出して笑った。


あいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてる――壊れた蓄音機のようにおれの心をぐるぐると繰り返し巡るその言葉は、おまえに出逢ってはじめて知った言葉なんだ。



愛、知ってる。



2010.12.31


戻る | *前 | 次#
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -