SSS | ナノ
僕の代わりに僕を愛して


「ロー、そろそろ寝ようよ」
「先に寝てて構わない」


机に向かって忙しなくペンを動かすローの背中に向かって声をかければ、振り向きもせずに素っ気なく返ってきた返事。


「昨日も遅かったでしょ?たまにはゆっくり休まなきゃ……」
「心配されるほどヤワじゃねェよ」


カリカリとペン先が紙面を削る音に混じって、無口な背中の向こうでフッと笑う気配。……笑い事じゃないんだけどな。


「それは分かってる、けど」
「フフ、一人じゃ眠れねェのか?」
「もう、すぐそうやって話を逸らす……わたしは自分の身体をちっとも気遣わないローが心配で、眠れないの!」


少しだけ声を荒げてそう言えば、やっとペンを動かしていた手を止めてローがこちらを振り返った。それからガタンと椅子を引く音がして、ゆったりとした足取りでこちらへ向かってくるローの表情は珍しく穏やかだ。

ベッドに腰掛けたまま優しげな色を湛える瞳を見上げれば。じっと見すぎだ、なんて言って笑う。近づいたローの頬へと伸ばしたわたしの手はいつの間にか刺青の入ったゴツゴツとした指に絡め取られ、鼻先を舐めるように小さくキスが落とされた。


「ロー、もう寝る?」
「……おまえには敵わねェな」


クツクツと喉の奥を震わせるローの腕の中にいとも簡単に閉じ込められて、柔らかいベッドに沈み込む。どうやら今日はもう眠ることにしたらしい。


「もう少し自分の身体の心配もしてくれたら、最高の船長なのに」
「おれの心配はおまえがしてりゃ、それで充分だ」
「……それじゃあローから目が離せないよ」
「ハッ…当たり前だ」


願わくばこれから先もずっと、あなたの側で睡眠の心配をしてみたり、食事の心配をしてみたり、そんな穏やかな日々を過ごせますように……。




2010.10.6
2013.6.20修正
title / ベイビーピンクは目に痛い
『オパールを捧ぐ』様へ提出


戻る | *前 | 次#
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -