現代 | ナノ
もっと好きになるカウントダウン


今年地デジ対応にしたばっかりの我が家の薄型液晶テレビの中では、派手な格好をしたアイドルが歌いながらくるくると踊っている。

さして興味があるわけではないけれど、なんとなくチャンネルを合わせていたそれをぼんやり眺めながら、ズルズルとそばを啜っていれば。


「やっぱナマエんちのおばさんの年越しそばはうめェな」
「あらやだわぁーロー君ってば!」
「……てか待って、何でローがいんの」


何故かマンションの隣の部屋に住む幼なじみのローも当たり前のような顔をして、こたつに入ってそばを啜っていた。しかも明らかにわたしの器より入ってる具が多い気がする。差別だ。


「何でって、年越し?」
「いやいや、あんたんち隣でしょ」
「年越した瞬間におれの顔が見えないと寂しいだろうと思ってな」
「誰がだよ」
「フフ、照れんな」
「おばさんはロー君がいないと寂しいわぁー」
「ちょ、ややこしいから母さんは黙ってて」


隣でニヤニヤ薄笑いを浮かべるローと、昔からわたしよりもローに甘いうちの母親に呆れ半分のため息を吐くが。まったく意に介した様子のない二人には暖簾に腕押し、ちっとも効きやしない。というか明らかに2対1で分が悪いのはわたしなんだ、どうせ。ぐすん。


「もうナマエったら素直じゃないんだからぁー」
「そうだぞ、女はおばさんくらい素直な方が可愛げがある」
「あらっもう! ロー君ったら……アイス食べる?」
「あ、いただきます」
「うるさいよ、あんたら」


見え見えの社交辞令を真に受けていそいそと台所へアイスクリームを取りに行った母親を横目で見送りながら、カゴに入ったみかんに手を伸ばそうとしたわたしの腕を、節くれ立った浅黒いローの手がギュッと掴む。


「……なに」
「可愛げねェおまえなんかとずっと一緒に居てェって思う物好きは、おれくらいだろうな」
「はっ? ちょ……ッ!!」


ニヤリ、言葉にするならこんな感じの笑みで口端を吊り上げたローの顔がゆっくりと、スローモーションのように近付いてきたと思ったら。わたしの視界は、年中消えることのない酷い隈に奪われる。

ついでに言うと、わたしのファーストキスってやつも目の前の幼なじみに奪われたところだ。


「なっ! あんた今、なに…ちょ、待っ!」
「フフ……顔真っ赤にして、ガキかよ」
「はぁーいお待たせーって、あら? ナマエどうしたの、あんた」
「ッ、何でもないっっ!!」


熟れた林檎のように真っ赤に染まった頬は、こたつ布団を頭からすっぽり被って隠してやる。不貞寝を決め込んだわたしの隣で楽しげに笑うローにはバレバレだろうけど、これはささやかなわたしの抵抗。



だって来年は今よりもっと、君に囚われてる気がするから



2011.12.31


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