海賊 | ナノ
ベッドの上でするたったひとつのこと


暗く静かな深海を進む、黄色い潜水艦。その廊下にいくつも並ぶ扉の一番奥。他の部屋よりもちょっぴり広くて、豪華な革張りのソファが置いてあるそこで密やかに行われている行為――

それは死の外科医と呼ばれ、あの瀕死状態の麦わらのルフィを救った腕を持つ男が施すにしては…何ともミスマッチな行為だと言えるかもしれない。


「爪はこまめに整えとけ、つっただろうが」
「だってー自分でするのめんどくさいんだもん」
「ったく、伸ばしっ放しにしてるからこんなボロボロになっちまうんだよ」
「……もういいじゃない、男のくせに細かいよロー」
「その細かい男のお陰で、こうしてもらえてんだろうが」
「あ、そっか」


ベッドヘッドに背を預けたローの開いた足の間に、ちょこんと収まったナマエ。その小さな身体を後ろから抱き込むようにして、刺青の入った左手が白くて細い指先を掴む。骨張った右手には細長い棒状の……爪やすり。

無骨な指先に似合わず小刻みに動かされるやすりが、桜貝のように薄く色づいた爪を見る見るうちにラウンド型へ整えていく。


「ほんとローって手先器用だよね。さすが外科医!」
「おれにこんなことさせんのは、おまえくらいだ」
「だって自分でするよりローがやるほうが上手だし」
「おまえが不器用すぎるだけだろ」
「それにローの手に触られるの、気持ちいいんだもーん」
「……何だ、誘ってんのか?」


ニヤリと笑ったローが掴んだナマエの顎を引き寄せる。肩越しに絡み合った強い眼差しに誘われるように、ナマエの長い睫毛が頬に影を作った。

柔らかく触れ合う唇は次第に深まり、耳につく水音を部屋に響かせる。向き直ったナマエがローの首に腕を回して、甘えた子猫のように身体を擦り付ければ。

ベッドの上に投げ捨てられたやすりが皺を作るシーツの波に飲まれ、コトンと音を立てて床に落ちた。


「……んっ、ロー…」
「どうして欲しい? ナマエ」
「ん、もっと……触って?」
「フフ…いい子だ」


縺れあうように倒れ込んだ身体をお互いに抱きしめあって、今宵もまたナマエはローに、ローはナマエへと溺れていく。



健康的な男の子と女の子が
ベッドの上でするたったひとつのこと




title / にやり
2011.5.23
2013.7.24修正

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