「きゃ、キャプテン……これは、何ですか」
「見て分からねェか? 野菜だ」
「や、それは分かるんですが……この量は一体……」
呆然と見つめる先には何人前あるんだ、というくらいに大きなボウルへ盛られたサラダ。
「今日は野菜の日だ。いいか? 野菜は一日350g取るのが望ましい、しかしどうしても不足がちになる」
「どうしたんですか、キャプテン。保健の先生みたいなこと言って……」
「おれは医者だからな」
「いや、でも外科医でしょ……」
ドヤ顔で医者だと言い張るキャプテン(まぁ実際そうなんだけど、何となく納得いかないのはわたしだけ?)の手には、いつの間にやらモリモリ生野菜のボウルと銀色のフォーク。
「船上では貴重なビタミン源だ、有り難く食え」
「……うっ、お気持ちは有り難いですが、せっかくですからどうぞどうぞキャプテ……んぐっ!!」
「好き嫌いはよくねェなァ? ナマエ」
「っ! ゔえぇ……んぐっ」
野菜の苦味に耐えられず、涙目になるわたしの頬をガッチリ固定したキャプテンが、ひどく愉しげな笑みを浮かべながら口の中へフォークを突っ込んでくる。
「やっ、奥! あっ奥まで突っ込んじゃ……や、だッ!」
「ほら、ちゃんと味わえよ? ナマエ」
「んぐっ! はぁ……あっ、もっ無理……!」
「まだまだ、だ。全然足りねェ」
「っはぁ……や、苦いっ! こんなに、たく……さんッ、だ、だめぇ!」
「何やってんだ、零さず全部飲み込め」
*****
「なぁペンギン、何やってんだ? 船長たち……」
「知らん、おれに聞くな」
「てか、何か……おれ、ヘンな気分になりそうなんだけど」
「耳塞いどけ、シャチ。関わるな」
「うん……(でも気になる)」
その日のハートの海賊団の食堂では、不埒な副音声に顔を赤く染めながら、食事をとるクルーたちの姿があったらしい。
8月31日は野菜の日!
モリモリ食べよう、1日350g!
2010.8.31
2013.7.21修正